アディダスによるリーボック(Reebok)の戦略レビュー

2020年12月にスポーツ用品大手のアディダスが子会社のリーボックの戦略レビューを発表しました。2016年に策定したリーボックの成長戦略プランである「Muscle Up」は順調に実行され、同社のホームマーケットである北米では2桁台の売上高成長を遂げていると発表しつつ、2021年3月までに戦略レビューを行い、売却もしくはグループ会社として継続するかの判断をするとも併記しています。

リーボックの売上高推移

2015年度以降の同社の売上高推移を見ると、確かに2018年度から2019年度にかけて売上高の若干の成長は見られるものの、ようやく2015年度の水準に戻ったというレベルです。

リーボックの売上推移(FY2015年から2019年)⇒参照したデータの詳細情報

戦略レビューの結果

2021年2月16日に、戦略レビューの結果、アディダスがリーボックの売却を進めるとの発表をしました。2006年のリーボックを発表した際に掲げていた買収のシナジーの一つに、Broader portfolio of world-renowned brandsとありますが、リーボックブランド自体にアディダスとしては魅力を感じなくなったという結論のようです。

スポーツシューズ市場

また、数量的な面でも、靴・シューズ業界の2019年の推定市場規模は約3000億ドル、平均成長率は4%、スポーツ用品の推定市場規模で見ると4740億ドル、平均成長率は7.2%なので、2015年度以降の成長率(CAGR)も業界平均に比べて見劣りしているのが現状です。
参照:「スポーツ用品・スポーツウェア・スポーツシューズ業界の世界市場シェアの分析」、「靴・シューズ・フットウェア業界の世界市場シェアの分析」

本件の業界順位への影響

業界再編は、2018年にケリングがPumaの株式をケリングの株主に現物配当して以降、大型のスポーツシューズの買収はありませんが、中国のアンタスポーツが、2018年にソロモンやウィルソンなどのスポーツ用品ブランドマネジメント会社のアメアスポーツを買収しております。リーボックの売上高から算出する市場シェアは、シューズおよびスポーツ用品業界ともに1%未満ですが、両業界ともにナイキとアディダスというトップ2以外は、激しく競っているため、リーボックの買収によって、今後業界順位が変更される可能性も十分あります。

スポーツシューズ会社の買収マルチプル

過去ナイキによるコンバース買収、アディダスによるリーボック買収、ケリングによるPuma買収、APAXパートナーズによるナイキ買収における買収価格は概ね売上高の1〜2倍で推移しております。

発表年買手売手対象会社買収価格通貨単位マルチプル
2003ナイキコンバース3.2億ドル売上高倍率1.6
2005アディダスリーボック38億ドル売上高倍率0.8
2007PPR(現ケリング)MayfairPuma53億ユーロ売上高倍率2.1
2013APAXパートナーズナイキコールハーン6億ドル売上高倍率1.1
2018ケリング既存株主ケリングPuma
シューズ業界の買収事例⇒参照したデータの詳細情報

上記データからの考察

  • アディダスによるノンコア売却案件です。売上高を回復させた時を見計らい売却を意思決定しました。
  • リーボックで北米市場を攻める目的で2005年に買収したものの、ナイキの牙城はなかなか崩せませんでした。
  • リーボックはブランド力があり、投資ファンドや複数ブランドの保有を増やしたい一部の戦略的な買手にとっては垂涎の対象会社でしょう。
  • 特にナイキ、アディダスに次ぐ業界3位以降の争いは、スポーツ用品やシューズ業界ともに混沌としており、リーボックを買収することで、規模でライバルを上回れることも魅力でしょう。

参照したデータの詳細情報について


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