油田・ガス田向けサービス提供業界の世界市場シェアの分析

石油やガス開発企業に対して油田やガス田の建設設備構築やリグなどの掘削機器の提供をする、油田・ガス田向けサービス提供業界の世界市場シェアや市場規模について分析を行っています。シュルンベルジェ、ハリバートン、ベーカーヒューズといった業界大手の概要や動向も記載しています。

【油田・ガス田向けサービス提供業界とは】

石油・ガスの探査・生産(E&P)企業に機器やサービスを提供する会社の総称です。ガス田・油田の掘削や仕上げ工程を担います。

油田・ガス田向けサービス提供業界のサービス内容は、掘削や輸送に使用する機器の生産から修理・地層の評価・データ管理など多岐に渡ります。油田・ガス田はオンショア(海洋部門)とオフショア(陸上部門)に分かれ、最近ではオフショアの油田発見が増加しています。次に挙げるのは、近年油田が発見された地域の一例です。

・アラスカ

・西テキサスの高山地域

・イスラエルのゴラン高原

英調査会社ウッドマッケンジーによると、2022年にはオンショア・オフショアを合わせて新規油田・ガス田の発見が330億ドル規模だと発表されています。ナミビアやブラジルで大規模油田が発見されており、今後も油田・ガス田向けサービス提供業界は成長を続けると見込まれます。

【油田・ガス田向けサービス】

石油サービス会社各社の2022年度の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、油田・ガス田向けサービス提供業界の2022年の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はシュルンベルジェ、2位はハリバートン、3位はベーカーヒューズとなります。

油田・ガス田向けサービス提供業界の世界市場シェアと業界ランキング(2022年)

順位 会社名 市場シェア(2022年)
1位 Schlumberger(シュルンベルジェ) 9.84%
2位 Halliburton(ハリバートン) 7.11%
3位 Baker Hughes(ベーカーヒューズ) 4.63%
4位 Saipem(サイペム) 3.71%
5位 NOV Inc.(ナショナル・オイルウェル・バーコ) 2.53%
6位 TechnipFMC(テクニップFMC) 2.35%
7位 Weatherford International(ウェザーフォードインターナショナル) 1.52%
8位 Wood Group(ウッドグループ) 1.06%
9位 Nabors Industries Ltd.(ネイバーズ・インダストリーズ) 0.93%
10位 Petrofac(ペトロファック) 0.91%
11位 Trican Well Service Ltd(トライカン・ウェル・サービス) 0.31%

【市場規模】

当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、石油サービス会社業界の2022年の世界市場規模を2855億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。

調査会社のスカイクエストによると、2022年の同業界の市場規模は2855億ドルです。2030年には年平均成長率6.6%で4760億ドルに成長すると予測されます。

調査会社のエクスパートマーケットリサーチによると、2020年の同市場規模は2580億ドルです。2023年から2028年にかけて年平均成長率6.5%での成長が見込まれ、2026年には3770億ドルに成長すると予測されます。

調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによると、2019年の同業界の市場規模は2678億ドルです。2027年にかけて年平均6.7%の成長を見込みます。

市場規模 成長率
2020年 2580億ドル 6.5%
2019年 2678億ドル 6.7%
石油サービス業界の推定市場規模の推移 ©業界再編

【業界上位3社の成長率と収益力比較】

業界トップ3のポジションにいるシュルンベルジェ、ハリバートン、ベーカーヒューズの3社について、収益成長率(2021年比)と営業キャッシュフロー(CF)成長率 (2021年比)について比較をしました。

売上高成長率では、ベーカーヒューズもほぼ10%と考えると3社とも2桁の収益成長率を達成しています。一方、営業CF成長率は3社ともほぼ横ばいでした。

営業キャッシュフローは、売上高から営業活動に必要な諸費用を差し引いた金額を指します。上記3社は、減価償却費や株式損失など非現金項目での損失があったことが、売上高に対して営業キャッシュフローが増加しなかった要因の1つだと推測できます。

【M&Aの動向】

2016年 シュルンベルジェが石油サービス機器大手のCameron Internationalを127億ドルで買収

2016年 フローライン大手のTechnipとサブシー・プロダクション・システム大手の米FMCテクノロジーズが2016年に経営統合してテクニップFMCが創設される

2017年 ベーカーヒューズがGEに買収され、石油・ガス事業を経営統合する

2019年 GEがベーカー・ヒューズを分社化

複合企業大手のゼネラル・エレクトリック(GE)は、2017年にベーカーヒューズを買収した後、金融事業で巨額の損失が発生しました。その影響から、GEは買収したばかりのベーカーヒューズの株を2〜3年かけて市場で売却する方針を発表し、2019年には分社化しました。

【会社の概要】

Schlumberger(シュルンベルジェ)

米テキサス州とパリに本社を置く世界最大級の油田検層事業会社です。シュルンベルジェの事業は、地下にある石油資源の調査や開発の計画、生産などのオペレーションまで、石油関連サービス全体に関わります。日本でも事業を展開しており、技術開発・製造拠点の1つであるSKKテクノロジーセンターがあります。

Halliburton(ハリバートン)

米テキサス州に本社を置く石油・天然ガス会社向けの検層サービス提供会社大手です。アタッシュケースの有名ブランド「ゼロハリバートン」と同じ創業者によって設立された会社です。ドバイに第2本社が置かれています。油田やガス田の地層評価、調査、掘削などをおこないます。2014年に同業のベーカーヒューズの買収を発表するものの断念しました。

Baker Hughes(ベーカーヒューズ)

BakerHughes(ベーカーヒューズ)は、1907年に設立された石油・ガス開発におけるサービスプロバイダーです。2017年にGEに買収されましたが、2019年には分社化しました。コンプレッサー(圧縮機)の分野では石油やガスインフラ向けに強く、GEが買収したShenyang Turbo MachineryやCameron Internationalのコンプレッサー部門を承継しております。

TechnipFMC(テクニップFMC)

TechnipFMC(テクニップFMC)は、フランスに本拠を置く石油・ガス系プラントエンジニアリング会社でアンビリカル、ライザー、フローライン大手のTechnipと、サブシー・プロダクション・システム大手の米FMCテクノロジーズが2016年に経営統合して誕生した会社です。テクニップはフランスの公的研究機関であるFrench Institute of Petroleumによって設立されました。FMCテクノロジーズは食品化学大手の米FMCから分社化して誕生しました。経営統合によってテクニップFMCは深海(サブシー)とオンショア・オフショア生産施設の両方を手掛ける大手エンジニアリング会社となりました。

テクニップとFMCの経営統合の案件ハイライト

2016年に発表されたフランス大手のプラントエンジニアリング会社のテクニップ社と米国の石油サービス会社のFMCテクノロジーズ社が経営統合をしました。石油価格が下落する中でのコスト削減を目指した経営統合の色合いが強い。

両社は深海向けを含む石油サービスを手掛けつつも、その出自からエンジニアリングに強いテクニップと機器製造も手掛けるFMCテクノロジーズという補完性もある。

同業界ではシュルンベルジェによるキャメロン買収、ベーカー・ヒューズとGEの石油・ガス事業の経営統合等再編が相次ぐ。

両社の再編の歴史

1884年 John BeanによってFMC設立

1958年 ブランズ石油協会と仏政府によってテクニップ設立

2001年 テクニップによるフローライン大手のCoflexipを買収

2001年 テクニップによるGenesis買収

2001年 FMCからのFMCテクノロジーズの分社化

2017年 FMCとテクニップが経営統合し、テクニップFMCへ

2020年 FMCテクニップがオンショア・オフショア事業を分社化

Saipem(サイペム)

イタリアに本拠を置く石油・ガス系プラントエンジニアリング会社です。イタリアのエネルギー大手ENI傘下にあります。2002年にフランスのブイグの子会社であるブイグオフショア、2006年に石油化学、LNG液化エンジニアリングに強いSnamprogetti を買収しています。
参考リンク:https://deallab.info/epc/

Wood Group(ウッドグループ)

1961年に設立された英国に本拠を置くエンジニアリンググループです。石油・ガス田向けの開発サービスが主力事業ですが、電力や再生可能エネルギーなどインフラ市場向けにもサービスを提供しています。2020年には原子力事業を売却し、再生可能エネルギーなどコンゴ成長が見込まれる分野へ注力していく方針が示されています。

NOV Inc.(ナショナル・オイルウェル・バーコ)

1841年に設立された米国に本拠を置く油田サービス会社です。特にリグを用いた掘削サービスに強みを持っており、海底用・陸上用を提供しています。ドリルパイプやポンプなど掘削に関わる機器を多く製造しており、保守・点検・修理などのサービスも行っています。

Nabors Industries(ネイバーズ・インダストリーズ)

油田・ガス田向け掘削サービスを展開する会社です。世界最大の陸上掘削リグ船団を運営しており、北米を中心に世界中で掘削サービスを提供しています。坑井の仕上げ・修理・改修や掘削リグ解体などのサービスも展開しています。

Petrofac(ペトロファック)

1981年に設立された英国に本拠を置くエネルギー業界向けのサービスを提供する会社です。油田・ガス田向けのエンジニアリングサービスの他、石油・ガス・再生可能エネルギーなどインフラのEPC事業者としても有名です。2022年には日立エナジーと提携し、洋上風力発電向けソリューションに関する協業契約を締結しました。

Trican Well Service Ltd(トライカン・ウェル・サービス)

トライカンはカナダに本社を置く石油サービス関連会社で、本国カナダを中心に展開しています。貯留層の特性評価、生産強化、パイプラインサービスなど石油や天然ガスの埋蔵量探査と開発に関わるサービスを提供しています。

Weatherford International(ウェザーフォードインターナショナル)

北米に本拠をおく石油ガスサービス会社で、掘削・坑井の建設・石油関連の機器とサービスの提供を行っています。2019年にプレパッケージド型のチャプター11から債務リストラクチャリングを実施しました。約100カ国で事業を展開しています。

Aker Solutions (アーケルソリューションズ)

ノルウェーに本拠をおくサブシー(subsea)の開発に強みを持つEPCです。

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