燃料電池スタートアップの資金調達額ランキングとカオスマップ

気候変動リスクへの危機意識が高まる中、2030年に向けて各国が脱炭素やゼロエミッション達成に向けて意欲的なガイドラインを策定しつつあります。クリーンエネルギーの本命の一つと言われている水素燃料電池の開発を行うスタートアップのカオスマップ(業界マップ)、資金調達額ランキングや市場シェアについて分析をしています。プラグパワー、ブルームエナジー、バラードパワー、セレスパワー、SFCエナジー、ループエナジー、パワーセル、サンファイヤーホームパワーソリューションといった有力会社の概要や動向も掲載しています。

燃料電池とは?

燃料電池とは、水素と酸素を燃料にして、電気を生み出す電池の総称です。水素と酸素が化学結合する際に直接電気を生み出すことができ、化石燃料を燃焼させ熱エネルギーを運動エネルギーに変え発電方法とは異なります。燃料電池における化学結合自体では二酸化炭素が発生しないため、クリーンエネルギーです。

燃料電池スタートアップのカオスマップ

燃料電池開発のスタートアップを直近の投資ラウンドでの資金調達額(縦軸)とシリーズラウンド(横軸)でマッピングした業界マップ(カオスマップ)を作成すると以下の通りとなります。円の大きさは資金調達累計額となります。またIPOをした会社の場合は、直近1年間の資本金及び資本準備金の増減と合計を直近の資金調達額と資金調達累計額とみなしております。

燃料電池スタートアップのカオスマップ(2021年)
燃料電池スタートアップのカオスマップ(2021年) 出所:Trancxn、会社情報より作成

水素を燃料に使うという考え方は古くからあったこともあり、燃料電池開発会社も通常のテック系のスタートアップと比べ、やや業歴が長い会社が多い点が特徴です。既に投資ステージを終え、株式を公開している会社が多いことも特徴です。上記スタートアップの資金調達累計額は、本ページの更新時点で約9556百万ドルとなっております。

燃料電池開発メーカーの資金調達累積額ランキング(市場シェア)

燃料電池開発メーカー各社の資金調達累計額(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、上述した業界全体の資金調達額を分母にして、資金調達額シェアを計算し、ランキング化すると、2021年7月時点では、1位はプラグパワー、2位はブルームエナジー、3位はバラードパワーとなります。

燃料電池開発メーカーの資金調達累積額ランキング(市場シェア、2021年7月時点)

  • 1位    プラグパワー    36.1%
  • 2位    ブルームエナジー    33.3%
  • 3位    バラードパワー    22.8%
  • 4位    セレスパワー    3.6%
  • 5位    SFCエナジー    1.7%
  • 6位    ループエナジー    1.3%
  • 7位    パワーセル    0.8%
  • 8位    サンファイヤー    0.3%
  • 9位    ホームパワーソリューション    0.1%
燃料電池スタートアップの資金調達額ランキング
燃料電池スタートアップの資金調達額ランキング 出所:Trancxn、会社情報より作成

市場規模

調査会社のバリュエーツによると、燃料電池業界の2020年の市場規模は33億ドルです。2027年にかけて年平均33.4%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報
2021年7月に、欧州委員会が温暖化ガスの削減に向けたロードマップを公表しました。2035年に、新車のゼロエミッション化を義務づけ、ハイブリッド車を含むガソリンやディーゼルといった内燃機関車の新車販売を禁止します。2035年に向け電気自動車(BEV)や燃料電池車(FCV)がいよいよ社会実装化され、燃料電池の市場も一気に拡大することが見込まれます。

業界のM&A

既存のエンジンメーカーや投資ファンドによる燃料電池スタートアップの買収はまだ積極的に行われていません。

2019年:Cummins(カミンズ)がカナダの燃料電池メーカーのHydrogenics(ハイドロジェニクス)を買収

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍

燃料電池の基礎マスター
図解・燃料電池自動車のメカニズム

主要な燃料電池開発スタートアップ

既存のエンジンメーカーも燃料電池の開発を行なっています。また中国のWeichai Powerやドイツのボッシュなどが積極的に出資を行なっています。開発力、資金力、技術面で勝るエンジンメーカーに対して、スタートアップ各社がどのように差別化や協業を図っていくかに注目が集まります。

Plug Power(プラグパワー)

本社所在地:米国
設立年:1997年
Plug Power(プラグパワー)は定置用燃料電池(ReliOn)とマテリアルハンドリング機器用燃料電池(GenDrive)を開発製造しております。2021年に韓国のSKグループが出資を行いました。   

Powercell(パワーセル)

本社所在地:スウェーデン
設立年:2008年
Powercell(パワーセル)はスウェーデンに本拠を置く燃料電池メーカーです。主に蓄電池および小型機器向けの電池を開発しています。水素製造も手がけています。ボッシュが筆頭株主となっています。   

Ballard Power Systems

本社所在地:カナダ
設立年:1979年
Ballard Power Systemsは家庭用コージェネレーション、バックアップ電源、および大型車用の水素燃料電池製品を開発・製造しています。中国のパワートレインなどの自動車部品大手であるWeichai Powerが筆頭株主となっています。2020年に自動走行システムをハネウェルへ売却しました。    豊田通商と日本国内の販売で提携しています。

Sunfire(サンファイア)

本社所在地:ドイツ
設立年:2010年
創業者:Nils Aldag
Sunfire(サンファイア)は高温型固体酸化物燃料電池の開発・製造を行なっています。   

Bloom Energy(ブルームエナジー)

本社所在地:米国
設立年:2001年
創業者:K.R. Sridhar
Bloom Energy(ブルームエナジー)はオンサイトで発電する固体酸化物燃料電池SOFC(固体酸化物形燃料電池)の製造・販売を行っています。   

SFC Energy(SFCエナジー)

本社所在地:ドイツ
設立年:2000年
SFC Energy(SFCエナジー)はメタノール型燃料電池を開発しています。   

Ceres Power(セレスパワー)

本社所在地:英国
設立年:2001年
Ceres Powerは固体酸化物型燃料電池を開発しています。ホンダと家庭向け発電機開発で提携しています。   

Home Power Solution(ホームパワーソリューション)

本社所在地:ドイツ
設立年:2014年
創業者:Zeyad Ella
太陽光パネルの電力を用いて生み出した水素を燃料電池として活用するシステムを開発しています。   

Loop Energy(ループエナジー)

本社所在地:カナダ
設立年:2013年
創業者:David Leger
Loop Energyは、大型車用の水素燃料電池を開発しています。Cummins(カミンズ)が筆頭株主です。   

日本の燃料電池メーカー

トヨタ自動車ホンダ、デンソー、豊田自動織機などが燃料電池の開発を行なっています。

参照したデータの詳細情報について


参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。

資金調達累計額ランキング

燃料電池スタートアップの資金調達累計額(2021年7月時点)
燃料電池スタートアップの資金調達累計額(2021年7月時点)

参照した市場規模の情報
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