紙幣印刷業界の市場シェアや市場規模について分析をしています。デラルー、ギーゼッケ&デブリエント、クレイン、オレル・フュズリといった紙幣印刷会社の概要や動向も掲載しています。
【紙幣印刷とは】
日本の場合は、紙幣は独立行政法人である国立印刷局が印刷をしていますが、英国、ユーロ圏、新興国等では紙幣印刷は外部の印刷会社へ委託されています。ホログラムや特殊インキ等で偽造防止技術を高める一方で、新興国等では印刷コストをできるだけ下げるニーズがあります。日本の場合では、1万円札の印刷コスト等かかる費用は約22円と言われております。
【紙幣印刷業界のシェア+ランキング】
紙幣印刷会社各社の2022年度の売上高(一部推定を含む)を分子に、その合計を分母に、2022年の紙幣印刷業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はギーゼッケ アンド デブリエント、2位はクレイン・カレンシー、3位はデラルーとなります。
なお、オベルチュール・フィドシェールは2008年の売上高以降、正確な売上高が確認できないため、当ランキングから除外しております。
紙幣印刷会社の市場シェアと業界世界ランキング(2022年)
順位 | 紙幣印刷会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | Giesecke&Devrient(ギーゼッケ アンド デブリエント) | 25.36% |
2位 | Crane Currency(クレイン・カレンシー) | 10.06% |
3位 | De La Rue(デラルー) | 7.68% |
4位 | Orell Füssli(オレル・フュズリ) | 5.29% |
5位 | Security Papers Ltd.(セキュリティ・ペーパーズ) | 1.12% |
紙幣印刷の分野での世界シェア1位〜5位は、2020年と順位変わらずそのままの順位となりました。6位にパキスタン政府からカテゴリー1A(KPID)の重要施設に分類されているセキュリティ・ペーパーズが6位にランクインしています。
【紙幣印刷業界の世界市場規模】
本サイトでは、2022年の紙幣印刷業界の世界市場規模をランキング内の各メーカー売上高合計である44.74億ドルとして市場シェアを計算しております。またその他にも各種公表されている情報は以下の通りです。
調査会社のプレシジョンレポートによると、2021年の紙幣デザインと印刷業界の規模は73.42億ドルとなりました。2027年にかけて 79.24億ドルに達し、年平均1.28%での成長を見込んでいます。
調査会社のリサーチアンドマーケッツによると、同市場の規模は2022年から2027年にかけて18.2億ドル成長し、年平均2.97%での成長を見込んでいます。
調査会社のアドロイト・マーケット・リサーチによると、2031年にかけて297億ドルに達し、年平均10.4%での成長を見込んでいます。
調査会社のグランビューリサーチによると、2022年の銀行紙幣も含むセキュリティ印刷業界の市場規模は31.4億ドルです。2023年〜2030年にかけて年平均7.4%での成長を見込みます。
紙幣印刷業界の市場規模の予想成長推移 ©ディールラボ
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⇒参照したデータの詳細情報【Ⅿ&Aの動向】
2017年 オベルチュール・フィドシェールが、アルジョウィギンス・セキュリティーから紙幣用紙製造工場(VHP)を買収
2018年 クレイン・カレンシーがクレインの傘下へ
2022年 ギーゼッケ アンド デブリエントが、米国Validの決済・IDソリューション事業を買収
2023年 クレイン・カレンシーは、クレーンから独立したクレーンNXTの傘下へ
【会社の概要】
ギーゼッケ アンド デブリエント(Giesecke&Devrient)
ドイツに本拠を置く紙幣印刷大手です。ユーロ紙幣の印刷を手掛けています。紙幣印刷以外にも、通信、電子決済、乗車券、健康保険証、ID、ロイヤルティ、 マルチメディアなどのアプリケーションやインターネットセキュリティ(PKI)に向けたスマートカード、システム、ソリューションを供給しています。同族会社であり、Von Mitschke-Collande家が株式を保有しています。約32カ国で1万人超の従業員を擁しています。
サフランについてSafran S.A (サフラン)はフランスに本拠を置く防衛・通信大手企業です。傘下のSnecma(スネクマ)にて民間及び軍用の航空機エンジンの製造を行っています。ナローボディー機ではGEと手を組んでいます。2018年に機内エンターテイメント、シート、機内食機器に強いゾディアックを買収しました。
クレイン・カレンシー(Crane Currency)
米国に本拠を置く紙幣印刷会社です。主に米ドルの印刷を手掛けています。親会社は米国の工業部品メーカーであるクレインです。同社の事業は4部門で構成されています。航空宇宙・電子機器部門は、航空宇宙と電子機器の2グループから成り、航空機着陸システムや燃料流量計などを製造しています。機能素材部門は、ファイバーグラス強化プラスチックパネルを製造しています。商品化システム部門は、自動販売機や両替機などを販売し、流体処理部門は、水処理システムなどの設計、製造、販売に従事しています。(出所:ヤフーファイナンス)
2023年よりクレーンから独立したクレーンNXTの傘下になります。
デラルー(De La Rue)
イギリスに本拠を置く紙幣印刷会社の世界大手。150種類以上の紙幣を印刷する実績を持ちます。イギリス紙幣をはじめとして、イラク中央銀行、グアテマラ銀行、ケニア中央銀行、スリランカ中央銀行、フィジー準備銀行、マケドニア共和国国立銀行、マン島政府等向けに紙幣を印刷しています。紙幣印刷以外にも、下図の通り、紙幣用の紙の製造、パスポート等の公的な書類、偽造防止用透かし、ホログラム、本人認証、製品認証、紙幣分別器(紙幣カウンター)等を手掛けています。
売上構成は紙幣印刷が最大です。
デ・ラ・ルーの製造拠点は、英国と欧州を中心にケニヤやスリランカにも拠点を有しています。
オレル・フュズリ(Orell Füssli )
スイスに本拠を置く紙幣印刷会社です。スイスフランの印刷を行っています。スイス証券取引所に上場しています。
セキュリティ・ペーパーズ(Security Papers Ltd.)
セキュリティー・ペーパーズは1965年に設立され、1967年にカラチ証券取引所に上場しました。1967年にパキスタン、イラン、トルコの合弁会社となり、銀行券、金融商品、大学の学位証明書、その他各種セキュリティーペーパーを製造しています。
オベルチュール・フィドシェール(Oberthur Fiduciaire)
フランスに本拠を置く紙幣印刷大手です。Savareファミリーが所有しています。2008年にネットワーク接続、認証、決済を保護する組み込みデジタルセキュリティを展開するオベルチュール・テクノロジーズを分社化しました。同社は、投資ファンドの傘下となり、2017年にはフランスの防衛大手サフラン(Safran)が展開するセキュリティ事業Safran Identity and Security(Morpho、モルフォ)と経営統合を行い、IDEMIA(アイデミア)が誕生しております。
その他:政府機関、独立行政法人
アメリカ合衆国製版印刷局(Bureau of Engraving and Printing)
米財務省印刷局はワシントンD.C.とテキサス州フォートワースに生産設備を持つ、米国政府内で最も大きな機密印刷物製造機関です。
国立印刷局(National Printing Bureau)
日本銀行券・旅券・収入印紙・郵便切手・官報など、国民の暮らしに欠かせない、極めて公共性の高い製品を製造しています。
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