植物工場の業界マップと資金調達額ランキング

施設内で野菜などを栽培する植物工場の開発や運営を行うスタートップが資金調達を行い、スーパーやコンビニなどの店頭にも植物工場から収穫された野菜が並び始めました。栽培に必要な場所をコンパクトにし、野菜の育成に必要な栄養素や温度をAIで最適にコントロールし、かつては難しいと言われた都心での「地産地消」を実現しつつあります。植物工場の開発運営会社であるInfarm、BrightFarms、Plenty、Bowery、Iron Ox、Freight Farms、Village farms、AppHarvest、Oishii Farm、スプレッド、プランテックスの概要や動向もまとめています。

植物工場の業界マップ(カオスマップ)

植物工場の開発運営会社を直近の投資ラウンドでの資金調達額(縦軸)とシリーズラウンド(横軸)でマッピングした業界マップ(カオスマップ)を作成すると以下の通りとなります。円の大きさは累計資金調達額となります。

植物工場のカオスマップ(2021年7月版)
植物工場のカオスマップ(2021年7月版)

植物工場自体の歴史は比較的古く、資金調達ではシリーズA~Eラウンドと幅広くなっています。IPOを実現した会社もあります。マップ上の会社の累計調達額は、本ページの更新時点で約2435百万ドルとなっております。

植物業界の資金調達額の市場シェアランキング

各社の累計調達額を分子に、上述した業界全体の資金調達額を分母にして、資金調達額シェアを計算し、ランキング化すると、1位はPlenty、2位はBowery、3位はInfarmとなります。

植物業界の資金調達額のシェアランキング(2021年7月時点)

  • 1位 Plenty 22.2%
  • 2位 Bowery 19.6%
  • 3位 Infarm 16.4%
  • 4位 AeroFarms 10.1%
  • 5位 BrightFarms 8.5%
  • 6位 Village farms 6.7%
  • 7位 AppHarvest 6.2%
  • 8位 Gotham Green 3.6%
  • 9位 Oishii Farm 2.1%
  • 10位 Iron Ox 1.9%
  • 11位 Agricool 1.7%
  • 12位 Freight Farms 1.1%
  • 13位 Plantlab 0.9%

植物工場の累計資金調達額のシェア(2021年7月時点)
植物工場の累計資金調達額のシェア(2021年7月時点)

市場規模の推計

調査会社のヴェリファイドマーケットリサーチによると、2019年の垂直型植物工場の市場規模は23.4億ドルです。2027年にむけて年平均19.6%の成長を見込み、2027年に規模が98.5億ドルへと拡大することを見込みます。一方で、調査会社のジオンマーケットリサーチによると、2020年の市場規模は43億ドルです。2028年に向けて年平均7.7%の成長を見込み、2028年には規模が79億ドルへと拡大することを見込みます。⇒参照したデータの詳細情報

植物工場開発運営会社の主なM&A

2019年:英オンライン小売りのOcado Groupが垂直型植物工場のJones Food Companyを買収

主要な植物工場スタートアップ

社名: Infarm(インファーム)
本社所在地: ドイツ
設立年: 2013年
創業者: Erez Galonska、Osnat Michaeli、Guy Galonska
Infarm(インファーム)はドイツに本拠を置く屋内型の水耕栽培向けの植物工場を開発する企業です。スーパーの屋内などにモジュール型の農場を設置し、収穫した野菜をその場で販売できるようにします。

社名: BrightFarms(ブライトファームズ)
本社所在地: 米国
設立年: 2008年
創業者: Paul Lightfoot、Ted Caplow,
BrightFarms(ブライトファームズ)はスーパーマーケットの近くに水耕栽培の植物工場を設計、資金調達、建設、運営し、野菜や果物の地産地消を目指します。

社名: Plenty(プレンティ)
本社所在地: 米国
設立年: 2013年
創業者: Matt Barnard、Nate Storey、Jack Oslan、Nate Mazonson
Plenty(プレンティ)は、高いタワーで野菜を栽培する垂直型植物工場を開発運営する会社です。農場を横でなく縦で展開する点が特徴です。ソフトバンクビジョンファンドも出資しています。

社名: Bowery
本社所在地: 米国
設立年: 2014年
創業者: Irving Fain、David Golden、Brian Falther
Boweryは屋内農場では、レタス、ルッコラ、ケール、バジルなどの有機農産物を栽培しています。Whole FoodsやForagersでの販売実績があります。

社名: Iron Ox
本社所在地: 米国
設立年: 2015年
創業者: Brandon Alexander、Jon Binney
Iron Oxは完全に自動化された植物工場を開発運営する会社です。ロメインレタス、サラダ菜、ケール、バジル、コリアンダー、チャイブなどを栽培することができます。Brandon Alexander氏はGoogleXの出身でもあります。

社名: Freight Farms
本社所在地: 米国
設立年: 2010年
創業者: Brad McNamara、Jon Friedman
Freight Farms(フレイトファームズ)はコンテナ内で野菜の水耕栽培を行う植物工場を開発運営する企業です。

社名: Village farms
本社所在地: カナダ
設立年: 1989年
創業者: Brad McNamara、Jon Friedman
Village farms(ビレッジファームズ)はトマト、キュウリ、パプリカの水耕栽培向け植物工場を運営しています。上場会社です。

社名: AppHarvest
本社所在地: 米国
設立年: 2014年
創業者: Jonathan Webb
AppHarvest(アップハーベスト)は水耕栽培向けの植物工場を運営しています。

社名: Spread(スプレッド)
本社所在地: 日本
設立年: 2006年
創業者: 稲田信二
スプレッドは、水耕栽培のレタスを生産し、「ベジタス」ブランドで販売しています。

社名: Oishii
本社所在地: 米国
設立年: 2016年
創業者: 古賀大貴
Oishiiファームは糖度の高いイチゴ栽培の植物工場を開発運営します。日本人が米国で起業したユニークなスタートアップです。ソニー、スパークス、川田氏(DeNA創業者メンバー)などから資金調達を行っています。

社名: Plantx(プランテックス)
本社所在地: 日本
設立年: 2014年
創業者: 山田 耕資
Plantx(プランテックス)はスーパーなどで水耕栽培を行える小型の植物工場を開発運営しています。クボタなどから資金調達を行っています。

社名: MD-Farm
本社所在地: 日本
設立年: 2018年
創業者: 松田 祐樹
MD-Farmはいちごなどの植物工場の設置や施工などのコンサルティングサービスを提供しています。

社名: AeroFarms
本社所在地: 米国
設立年: 2004年
創業者: David Rosenberg、Ed Harwood、Marc Oshima
AeroFarmsは葉物野菜の垂直型植物工場を展開しています。

社名: Agricool
本社所在地: フランス
設立年: 2015年
創業者: Guillaume Fourdinier、Gonzague Gru
Agricoolは有機栽培のイチゴを生産するためのコンテナ式垂直栽培システムを開発しています。

社名:Plantlab(プラントラボ)
本社所在地:オランダ
設立年:2010年  
Plantlab(プラントラボ)はカスタムメイドの植物生産ユニットを開発・運営しています。   

社名:Gotham Green(ゴッサムグリーン)
本社所在地:北米
設立年:2009年
創業者:Viraj Puri、Eric Haley
Gotham Greenはビルなどの施設の屋上で温室農園を展開します。主に水耕栽培の野菜を育てています。   

社名:SkyGreen(スカイグリーン)
本社所在地:シンガポール
設立年:2009年
創業者:Jack Ng、Ho Che Fei
SkyGreen(スカイグリーン)はシンガポールに本拠を置く垂直型農場の運営会社です。   

社名:Urban Crop Solutions(アーバン・クロップ・ソリューションズ)
本社所在地:ベルギー
設立年:2014年
創業者:Maarten Vandecruys
Urban Crop Solutions(アーバン・クロップ・ソリューションズ)は葉物野菜の垂直栽培システムを開発運営しています。   

社名:Vertical Farms(バーティカルファームズ)
本社所在地:オーストラリア
設立年:2009年
Vertical Farms(バーティカルファームズ)は水耕栽培用の垂直農業システムの開発を行なっています。   

社名:Grönska
本社所在地:スウェーデン
設立年:2014年
Grönskaは屋内垂直農業用のシステムを開発しています。   

社名:Growup
本社所在地:イギリス
設立年:2013年
Growupはイギリスで垂直農業システムを開発する会社です。ハーブ、サラダ、マイクログリーンなどが栽培できます。   

社名:HarvestX
本社所在地:日本
設立年:2020年
創業者:市川友貴
HarvestXは完全自動化した果物工場を開発する会社です。   

植物工場分野に積極的に投資を行っているベンチャーキャピタルや事業会社

Hanaco Ventures Capital、Atomico、Hanaco Ventures Capital、Bonnier Corp、TriplePoint Capital、Balderton Capital、Cox Enterprises、Catalyst Investors、WP Global Partners、NGEN Partners、SoftBank Vision Fund、Bezos、DCM Ventures、Finistere Ventures、Fidelity Investments、GV、Temasek, Henry Kravis、First Round Capital、GGV Capital、Pathbreaker Ventures、Crosslink Capital、Amplify Partners、Eniac Ventures、Y Combinator、Ospraie Ag Science、Spark Capital、LaunchCapital、Rothenberg Ventures、Morningstar、Narya、ValueAct Capital、ValueAct Capital、Equilibriumなどが、植物工場のスタートアップに過去投資を行っています。

植物工場によって影響を受ける業界

野菜や果物といった生鮮品や青果の美味しさは、「鮮度」に大きく相関します。採りたて野菜の美味しさは、農場で実際に食べてみると、違いが分かります。植物工場は、その場で採りたてを食べられるという点で、地方の農園で収穫された農作物を、長距離輸送を行い、都心まで運ぶ、という従来型のサプライチェーンと比べて、省エネかつ鮮度維持で圧倒的な競争力を持ちます。究極的には、自宅にミニ植物工場を作り野菜の栽培ができるようになると、そもそもスーパーで野菜を購入するという行為自体が必要なくなるかもしれません。水耕栽培向けの野菜については、植物工場の技術要素はほぼ完成形に近くなっています。植物工場の社会実装が始まるフェーズに入りつつあります。仮に植物工場が拡大した場合に、影響を受ける業界は、農機、輸送、スーパーなどの小売り、肥料、種(シーズ)、包装業界などがあげられます。

植物工場と露地栽培の比較

レタス栽培の場合の植物工場、グリーンハウス、露地栽培の比較表は以下の通りです。使用する面積や収穫量では植物工場に軍配があがります。

レタス栽培の場合の植物工場、グリーンハウス、露地栽培の比較表
レタス栽培の場合の植物工場、グリーンハウス、露地栽培の比較表

植物工場ビジネスの始め方

家庭菜園で野菜は誰でも育てられるように、植物の育成は、光・栄養・二酸化炭素・温度で決まります。いくつかの野菜については植物工場で水耕栽培を行う技術的な要素が整いつつあります。差別化のポイントとしては、「植物工場の大きさ」「電気代」「光源」「肥料・溶液」「種子」「二酸化炭素」「温度」「完全自動化のシステム設計」「容器のハード製造」「設置場所」といった項目をどのように調整するかです。現在は大規模植物工場(グリーンハウスの植物工場版)から、より小型化した施設内植物工場へとトレンドが移行しつつあります。さらにもう一歩踏み込んだ、太陽光パネルと蓄電池を併せ持ったマイクロ植物工場が、各家庭のベランダで設置され、植物工場の遠隔管理をしながら365日栽培可能にするアプローチをするプレーヤーも今後出現するでしょう。

参照したデータの詳細情報について


このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
会員の方はログイン下さい。
会員登録はこちらです。