ローデンストックのM&Aと今後の成長戦略についての分析

2021年に投資ファンドのAPAXが、ドイツのカール・ツァイスと並び立つ光学大手であるRodenstock(ローデンストック)を買収しました。ローデンストックは140年以上も続くドイツ光学の至宝とも評される技術力の高い会社で業績も安定していますが、2003年に創業家が持分を投資ファンドに売却して以降、株主という観点では投資ファンド間を行き来しており、安定しておりません。APAXのよる買収の背景や今後の売却先について簡単な分析を行いました。

ローデンストックの概要

Rodenstock(ローデンストック)はドイツのミュンヘンに本拠を有する光学・アイウェアメーカーで、1877年にJosef Rodenstockにより創立されて以来140年超の歴史を有する業界の代表的なプレーヤーとなっています。カメラレンズにも強みを持ちます。創業家が持分を英国のプライベートエクイティファンドPermiraに売却(2003年)したのをきっかけに、2006年にはBridgepointに譲渡、その後Compassに2016年にマジョリティを譲渡、2年後の2018年にCompassが完全買収を完了、という流れになっています。2021年にはCompassがApax Partnersに譲渡し新株主が再度プライベートエクイティファンドになっています。事業は堅調ですが、株主は投資ファンド間を行き来しております。

APAXの概要

Apax Partnersは英国に拠点を置くプライベートエクイティファンドであり、1969年に設立された老舗のファンドです。ニューヨーク・香港・上海・テルアビブ・ミュンヘン・ムンバイ等の世界各国の主要都市にオフィスを構えています。主な注力セクターはテクノロジー、サービス、ヘルスケア、インターネット/コンシューマーの4セクターであり、いままでApaxが行ったファンドレイズ総額は600億ドルを超えグローバルで7拠点、280人超のプロフェッショナルを擁しているファンドになります。

買収価格の分析

Apaxがローデンストックを買収した際の企業価値は15-17億ユーロで評価されたといわれており、2019年の推定売上高450百万ユーロに対して、概ね業界平均に近い3倍超のマルチプルでのエントリーになっています。

眼鏡業界の企業価値売上高マルチプル
眼鏡業界の企業価値売上高マルチプル©ディールラボ

Compassはコロナの影響により75百万ユーロを追加的に資本注入しており、CompassはCOVIDの影響が平準化された後に売却を検討すると2020年5月ごろから噂が流れていたところ、今回Apaxへの譲渡に至っています。コロナにより一時的に業績が下降したものの、Biometric Intelligent Glasses (B.I.G).という高性能レンズにフォーカスしたことが功を奏し、業績は想定より早く回復したとのことです。Compass買収時は売上高417百万ユーロ、EBITDA80百万ユーロあったローデンストックの業績は2019年には450百万ユーロ、EBITDA100百万ユーロ超に回復しています。ライベートエクイティファンドによる買収案件も複数あり、安定した収益と低Capex、高いブランド力を有している会社であれば買収対象になることが示唆されます。アイウェアやレンズ等の業界はプライベートエクイティファンドが注目しやすいアセットであり、日本国内でもCLSAによるエルドラドの買収、L Catterton・三井物産によるOndaysの共同買収等のいくつかの事例があります。

眼鏡市場と今後の成長戦略の考察

伝統的な眼鏡レンズの成長率は3%程度を見込みますが、一方で、眼内レンズ市場(Intraocular Lenses :ICL)は世界的にも成長が見込まれる分野です。調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによると、同市場規模は2018年に32億ドルです。2026年までに年平均6.8%での成長を見込みます。また調査会社のモードーインテリジェンスによると、ICL市場規模は2020年をベースとして2025年までにグローバルで見た場合に年平均4.9%で成長すると見込まれております。日本の大手光学メーカーであるHOYAも力を入れており、2016年度には白内障手術で使用されるIOL世界市場の約30%を獲得し国内市場シェア1位、グローバルでも3位のポジショニングを築いています。⇒参照したデータの詳細情報

ローデンストックはICL市場に積極的に展開するというコメントはないものの、個人別にカスタマイズしたレンズの開発・提案を行っています。また、オンライン視力検査をウェブサイト等で提供しており、今後Apaxの傘下になることで更なる成長市場への投資や、既存の事業の見直しも含めボルトオンM&Aを行う可能性もあると想定されます。ローデンストックの強みは高い技術力と、個人にカスタマイズ可能なアイウェア、Spectacles consultantを擁して個々の消費者にあったフレームの提案になるので、眼内レンズ市場の需要をいかに取り込んでいくかは注目すべき点になるでしょう。眼内レンズはアジアにおいても成長が見込める分野ですので、今後日本国内においてもヘルスケアとコンシューマーの両セクターにまたがる分野として注目度は高いものと思料されます。

参照したデータの詳細情報について


このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
会員の方はログイン下さい。
会員登録はこちらです。