植物肉・培養肉スタートアップの業界カオスマップと資金調達額ランキングの分析

代替肉と呼ばれる植物肉や培養肉のスタートアップの業界カオスマップと資金調達額ランキング(市場シェア)を分析しています。持続可能な食料供給の観点から代替肉の技術には大きな注目が集まっています。代替肉スタートアップであるネクスト・ジェン、モチーフ・フードワークス、Hooray Foods、ベターミート、Rebellyous Foods、プランティブルフーズ、スターフィールド、DAIZ、ビヨンド・ミート、インポッシブルフーズ、モサミート、ミータブル、アップサイドフーズ、スーパーミート、フューチャーミート、ニューエイジミーツ、アレフファームズ、リディファインミートの概要や動向も掲載しております。

植物肉・培養肉スタートアップの業界カオスマップ

植物肉・培養肉開発のスタートアップを直近の投資ラウンドでの資金調達額(縦軸)とシリーズラウンド(横軸)でマッピングした業界マップ(カオスマップ)を作成すると以下の通りとなります。円の大きさは資金調達累計額となります。またIPOをした会社の場合は、直近1年間の資本金及び資本準備金の増減と合計を直近の資金調達額と資金調達累計額とみなしております。

植物肉・培養肉の業界カオスマップ(2022年3月時点)
植物肉・培養肉の業界カオスマップ(2022年3月時点) 出所:Trancxn、会社情報より作成

大豆などの植物性タンパク質は、食肉に代替するタンパク質として様々な食材として利用されていました。現在は、植物性タンパク質を、食肉と変わらない食感や色合いにする植物由来の肉から取得する方法や、動物性タンパク質を肉の細胞を取り出し培養する培養肉から取得する方法が生み出されています。投資ステージは初期ステージのスタートアップが多い印象です。上記スタートアップの資金調達累計額は、本ページの更新時点で約4900百万ドルとなっております。

代替肉業界の市場シェアランキング(資金調達累積額ベース)

代替肉開発会社の資金調達累計額を分子に、上述した業界全体の資金調達額を分母にして、資金調達額シェアを計算し、ランキング化すると、2022年3月時点では、1位はビヨンド・ミート、2位はインポッシブルフーズ、3位はフューチャーミートとなります。

代替肉業界の市場シェアランキング(資金調達累積額ベース)

順位会社名市場シェア(2022年3月)
1位ビヨンド・ミート33.5%
2位インポッシブルフーズ31.3%
3位フューチャーミート8.0%
4位モチーフ・フードワークス7.0%
5位ネクスト・ジェン4.7%
6位アップサイドフーズ4.3%
7位アレフファームズ2.4%
8位モサミート2.2%
9位スターフィールド2.1%
10位ミータブル1.3%
11位グリーンマンデイ1.2%
12位DAIZ1.1%
13位リディファインミート0.7%
14位プランティブルフーズ0.5%
15位イノボプロ0.5%
16位Rebellyous Foods0.3%
17位ベターミート0.2%
18位ニューエイジミーツ0.1%
19位スーパーミート0.1%
20位Hooray Foods0.1%
代替肉業界の市場シェアランキング(資金調達累積額ベース) 出所:Trancxn、会社情報より作成
植物肉・代替肉の資金調達累計額の市場シェアランキング(2022年3月)
植物肉・代替肉の資金調達累計額の市場シェアランキング(2022年3月) 出所:Trancxn、会社情報より作成

市場規模

当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、代替肉業界の2020年の世界市場規模を16億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。
調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによると、2018年の同業界の市場規模は43億ドルです。2026年にかけて、年平均8.4%での成長を見込みます。調査会社のマーケッツアンドマーケッツによると、2019年の同市場規模は16億ドルです。2026年にかけて年平均12%での成長を見込みます。調査会社のマーケットデータフォーキャストによると、2020年の同市場規模は16億ドルです。2025年にかけて年平均12%での成長を見込みます。矢野経済研究所によると、2020年における代替肉の世界市場規模は、メーカー出荷金額ベースで2,572億6,300万円となります。⇒参照したデータの詳細情報

調査会社のリサーチアンドマーケッツによれば2019年の食肉加工業界の市場規模は6650億ドルなので、食肉市場に占める代替肉市場は1%未満です。

代替肉市場は、伝統的な食肉市場に比べると非常に小さくなっています。参入している企業は非公開のスタートアップが多く、市場シェアは今後大きく変動する可能性があります。CO2削減や倫理的な観点から成長が期待される業界です。

業界のM&AやIPO

  • 2022年 ハウス食品が大豆由来の植物肉に強い米国のKeystone Natural Holdingsを買収
  • 2021年 JBSが培養肉メーカーのBioTechを買収
  • 2021年 JBSが代替タンパク質メーカーのVivera(ビベラ)を買収
  • 2021年 日本の植物肉ベンチャーのネクストミーツ(Next Meats)が米国のSPACを買収し上場
  • 2018年  ユニリーバがオランダの植物肉メーカーであるベジタリアンブッチャーを買収
  • 2017年  Maple Leaf FoodsがField Roastを買収
  • 2014年  Pinnacle Foodsがカナダの植物肉メーカーであるGardeinを買収

代替肉の種類

植物からタンパク質成分を取り出して製造する植物肉と動物の細胞を培養した培養肉に大きく分けられます。

植物肉(Plant based meat)

大豆等の豆類、小麦等から肉と同等の食感や風味に仕立てています。大豆ハンバーグといった古くからある食材ですが、製造工程等に改良を加え、よりリアルの食肉に近いものを目指した技術革新が続いています。

培養肉 (Clean meat)

2013年にマーストリヒト大学のマーク・ポスト教授によって実用化されて以降急速に発展しています。採取する細胞の種類、幹細胞の採取方法、培養液の種類によって培養される肉質が異なるのが特徴です。

伝統的な食肉との比較

下表の通り、食肉との比較では温暖化ガス、衛生面、倫理的な側面でクリーンミートが優れていることがわかります。

代替肉のメリットまとめ
代替肉のメリットまとめ
更に業界を理解するためのお薦め書籍

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義
クリーンミート 培養肉が世界を変える

主要な植物肉・培養肉スタートアップ

Redefine Meat(リディファインミート)

本社所在地: イスラエル
設立年: 2018年
創業者: Eshchar Ben Shitrit、Adam Lahav
Redefine Meat(リディファインミート)は3Dプリント技術を用いて、植物性の代替肉を開発しています。

Aleph Famrs(アレフファームズ)

本社所在地: イスラエル
設立年: 2017年
創業者: Didier Toubia、Shulamit Levenberg
Aleph Famrs(アレフファームズ)は3Dバイオプリンティング技術を用いて細胞培養の牛肉を開発しています。

New Age Meats(ニューエイジミーツ)

本社所在地: 米国
設立年: 2018年
創業者: Brian Spears、Andra Necula
New Age Meats(ニューエイジミーツ)は細胞培養の豚肉や鶏肉を開発しています。

Future Meat Technologies(フューチャーミートテクノロジーズ)

本社所在地: イスラエル
設立年: 2018年
創業者: Yaakov Nahmias
Future Meat Technologies(フューチャーミートテクノロジーズ)はイスラエルに本拠を置く培養肉の開発製造会社です。

SuperMeat(スーパーミート)

本社所在地: イスラエル
設立年: 2015年
創業者: Ido Savir、Yaakov Nahmias
SuperMeat(スーパーミート)は、鶏の培養肉を開発製造する会社です。

Upside Foods(アップサイドフーズ)

本社所在地: 米国
設立年: 2015年
創業者: Uma Valeti
元Memphis Meatsです。培養肉の開発製造会社です。

Meatable(ミータブル)

本社所在地: オランダ
設立年: 2018年
創業者: Krijn de Nood、Daan Luining
Meatable(ミータブル)はオランダに本拠を置く培養肉開発製造会社です。

Mosa Meat(モサミート)

本社所在地: オランダ
設立年: 2015年
創業者: Mark Post、Peter Verstrate
Mosa Meat(モサミート)は牛の培養肉を開発製造する会社です。

DAIZ

本社所在地: 日本
設立年: 2015年
創業者: 井出 剛
DAIZは発芽大豆から植物肉を製造しています。「ミラクルミート」ブランドで展開をしています。日清食品ホールディングス、味の素、長谷川香料三菱ケミカル、丸紅、兼松、丸井グループ、物語コーポレーション、東洋製罐グループなどと提携をしています。国内では油脂メーカーである不二製油が大豆由来の食品に強みを持っています。

Starfields(スターフィールド)

本社所在地: 中国
設立年: 2017年
スターフィールドは中国に本拠を置く植物肉メーカーです。

Plantible Foods (プランティブルフーズ)

本社所在地: 米国
設立年: 2016年
創業者: Maurits van de Ven、Tony Martens
プランティブルフーズは、浮き草(レムナ)を使った植物性タンパク質食品を提供しています。レムナは大豆の100倍効率的にタンパク質を抽出できるとされています。

Rebellyous Foods(レベリアス・フーズ)

本社所在地: 米国
設立年: 2017年
創業者: Christie Lagally
Rebellyous Foodsは植物性タンパク質を用いてナゲットを製造する会社です。

Better Meat(ベターミート)

本社所在地: 米国
設立年: 2018年
ベターミートは、豚肉、鶏肉などの代替品を植物性タンパク質ベースで製造する会社です。

Hooray Foods

本社所在地: 米国
設立年: 2019年
創業者: Sri Artham
Hooray Foodsはココナッツオイル、米粉、タピオカデンプン、リキッドスモークなどを使用した植物性ベーコンの製造販売を行なっています。

nextgen(ネクスト・ジェン)

本社所在地: シンガポール
設立年: 2020年
創業者: Timo Recker(ティモ・レッカー)、Andre Menezes(アンドレメネゼス)
nextgen(ネクスト・ジェン)は大豆由来の鶏もも肉の製造会社です。2022年2月にテマセクやシンガポール経済開発庁EDBIから1億ドルの資金調達を行いました。

Motif FoodWorks(モチーフ・フードワークス)

本社所在地: 米国
設立年: 2019年
肉の代替品、植物由来のタンパク質素材、乳製品を含まないタンパク質を開発しています。2019年にギンコ・バイオワークス(Ginkgo Bioworks)から分社化して誕生しました。

Beyond Meat (ビヨンドミート)

本社所在地: 米国
設立年: 2009年
創業者: イーサン・ブラウン
ビヨンドミートはハンバーガー用のパテ(ビヨンドバーガー)やソーセージ向けの加工肉といったエンドウ豆をベースとした植物肉を製造する会社です。

Beyond Beef
米国のスーパーでよく見かけるビヨンドミート社のBeyond Beef
Photo by ディールラボ

Impossible Foods (インポッシブルフーズ)

本社所在地: 米国
設立年: 2011年
創業者: パトリック・ブラウン
スタンフォード大学のパトリック博士によって2011年に設立された植物肉メーカーです。大豆内に含まれる「ヘム」という組織を土台にしてよりジューシーな代替肉の開発製造をしています。タンパク質は大豆、ジャガイモから、油はひまわり油等を用いたインポッシブルバーガー等を販売しています。

impossible foods
米国のスーパーでよく見かけるimpossible foods
Photo by ディールラボ

Green Monday(グリーンマンデイ)

本社所在地: 香港
設立年: 2012年
創業者: Francis Ngai、David Yeung
Green Monday(グリーンマンデイ)は香港に本拠を置く植物性の豚肉の開発会社です。

InnovoPro(イノボプロ)

本社所在地:イスラエル
設立年:2016年
InnovoPro(イノボプロ)は、タンパク質やその他の食品成分を分離するための加工技術を開発しています。   

植物肉や培養肉分野に積極的に投資を行っている事業会社やベンチャーキャピタル

テマセク、K3 Ventures、Ontario Teachers’ Pension Plan、BlackRock、General Atlantic、CPT Capital、Fonterra、Louis Dreyfus、Sand Hill Angels、Evolution VC Partners、Stray Dog Capital、Greenlight Capital、Green Circle Foodtech Ventures、Clear Current Capital、
Liquid 2 Ventures、Sinai Ventures、Fifty Years、Blue Horizon、Vectr Ventures、Lerer Hippeau Ventures、Unshackled Ventures、Sky9 Capital、Joy Capital、Matrix Partners China、Coatue、 Mirae Asset、Khosla Ventures、ビルゲイツ、Sailing Capital、Nutreco、三菱商事、 ArcTern Ventures、Agronomics、Merck Ventures、Bell Food Group、DSM、BlueYard、Eurostars、Atlantic Food Labs、Future Positive Capital、Norwest Venture Partners、タイソンフーズ、DFJ、IndieBio、New Crop Capital、SOSV、New Crop Capital、Rich Products Corporation、Emerald Technology Ventures、S2G Ventures、Neto Group、TechU、Sand Hill Angels、FF Venture Capital、VisVires New Protein、L Catterton、VisVires New Protein、カーギル、Happiness Capital、Hanaco Ventures Capitalなどが植物肉や培養肉に出資を行っている会社となります。

大手食品メーカーの動向

ネスレ(Nestle)は、植物肉のインクレディブル・バーガー(Incredible Burger)やスイートアース(Sweet Earth)の販売を開始もしくは検討しています。ユニリーバ(Unilever)は、植物肉ブランドのベジタリアンブッチャー(Vegetarian Butcher)を買収しました。ミートパッカーのJBSやタイソンフーズも参入を検討しています。日本では、大塚食品、不二製油が大豆由来の植物肉で先行しています。

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