フランチャイズ・パートナーズについて
インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズ(Independent Franchise Partners、以下「FP」)は、モルガンスタンレーで投資運用部門に属していたHassan Elmasry氏らによって2009年に設立されたロンドンに本拠をおく独立系の資産運用会社です。2020年現在155 億ドルの資産を運用しています。潜在的な価値(「顕著な無形資産」)が株式価値に反映されていない企業への集中投資を行うことで、リターンをあげる運用戦略を採用しています。
フランチャイズパートナーズの最新投資先
キリンホールディングスについて
キリンホールディングスは、1907年に設立された総合飲料メーカーです。三菱グループに属します。ビール事業では、ラガー、一番搾り、のどごし生等のブランドを擁し、国内最大手の一角です。協和発酵キリンを通じて、医薬と食品の連携を目指しています。ブラジルのビール大手であるスキンカリオールを売却する一方で、化粧品や健康食品大手のファンケルの出資を行い、更なる成長を狙っています。
キリン経営陣とFPとの対話経緯
- 2014年FPによるキリンの株式を購入FP
その後経営陣との11回にわたる会合を行いました。4通の書簡も送付しました。なおFPは当頁作成時点で約2%の株式を保有しています。
- 2019年2月5日キリンが協和発酵バイオの株式を1280億円で追加取得キリン
食と医を中核とするポートフォリオを構築するために協和発酵バイオの持ち分比率を高めます。
- 2019年2月14日長期経営構想であるキリングループ・ビジョン2027(KV2027)とキリングループ2019年-2021年中期経営計画の発表キリン
KV2027では「医と食をつなぐ事業」を展開します。
既存事業(キリンビール、ライオン酒類、ミャンマーブルワリー、キリンベバレッジ、協和発酵バイオ)の利益成長を図ることを目標としています。
中計では、財務目標として(1)平準化EPS年平均成長率5%以上、(2)ROIC2021年度10%以上を設定しています。 - 2019年8月6日ファンケル株式の議決権ベースで約33%を1293億円で取得キリン
ファンケル買収のEBITDAマルチプルは約26倍です。創業者の池森氏から取得しました。
その後ファンケルの株価も堅調です。
- 2019年11月6日フィナンシャルタイムズがキリンに関する記事を公開
- 2019年11月25日豪州のライオン飲料を6億豪ドルで中国の蒙牛乳業へ売却
- 2020 年 2 月14 日キリンによる「株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」をリリースキリン
FPからの6000億円の自己株式取得枠設定という提案に反対です。大規模な負債調達や大規模な自己株式取得は実行可能性が低いと思われます。既に1000億円の取得枠を定めております。
FPからの役員報酬の提案に反対です。会社提案の役員報酬制度の方が適切です。
FPからの新たに2名の取締役選任提案に反対です。新任の取締役は、KV2027を遂行するのに十分な知識、能力、経験、見識を有しています。社外取締役の割合も高めています。 - 2020年2月16日FPからキリンに書簡を送付FP
役員報酬の変更、社外取締役の割合が高まったことは評価します。社外取締役の独立性に関する懸念、多角化戦略見直しや自社株取得枠の拡大ついては再考願いたいです。
- 2020年2月18日FPが「企業価値と長期的リターンの向上に向けて」のプレゼンテーションを公開FP
国内外ビール事業(ミャンマー、豪州、フィリピン)は魅力的であるものの、各事業毎の価値の合算(サム・オブ・パーツ)と株式市場の評価との乖離から明らかな通り、非中核事業、具体的には協和キリン、協和発酵バイオ、ファンケル、栄養・ヘルスケアへの取り組み、国内清涼飲料事業、オーストラリアの乳製品・飲料事業が事業価値を毀損しています。
よって、協和キリン、協和発酵バイオ、ファンケル、国内飲料事業を売却するべきです。
また、一般的にコングロマリットがもたらすディスカウントも解消すべきです。
「医と食をつなぐ」戦略のシナジーが数量化されていない点にも懸念があり、本業であるビール事業への回帰を再考して欲しいです。 - 2020年2月19日キリンが「FPとの対話」を公開キリン
ビール事業以外の成長戦略の重要性や、同社は協和キリン、協和発酵バイオ、ファンケルは創業以来の技術的な優位性を持つために、こうした技術を活用したヘルスケア領域での事業展開は戦略的に正しいものであります。
1000億円の自己株式取得によって株主リターンを適切に高めることができ、また提案した新取締役は各人の資格要件を勘案すれば適切であると思われ、FPの提案を受け入れる必要はないです。
- 2020年2月21日キリンが独立役員届出書を開示
- 2020年3月2日キリンが「自己株式の取得状況」を開示キリン
1000億円の自己株取得枠のなかで、2月末時点までで約585億円実際に取得しました。
- 2020年3月2日FPがキリン経営陣に対して「医と食をつなぐ」戦略の再考を要請FP
P&Gやネスレといった食品企業は医薬品やスキンケアへの多角化を既に撤回しています。
ビール大手は、ビール事業に特化することでキリンを上回るリターンをあげています。
ファンケルへの出資への定量的なシナジー効果分析を明示して下さい。
前中計であるKV2015は数値目標の未達成や営業損失の計上といった結果をもたらしているので、現中計であるKV2027も、特に「医と食をつなぐ」戦略については、期中に改めて見直すような柔軟な対応をして下さい。
- 2020年3月3日キリンがインベスターデイを実施キリン
食領域と医領域の重要性や成長戦略について改めて説明をしました。
- 2020年3月5日FPが「キリン経営陣がなぜKV2027の検証を行わないか」に関するプレゼンテーションを開示FP
食と医を繋ぐ発酵技術によって、企業価値がどのように向上するのかの数量的分析がなされていません。
また、同新領域の利益貢献は2027年時点でも小さい割合です。
協和発酵バイオとファンケルの投資に2580億円を投資しましがた、株価の推移から明らかに当該投資が評価されているとは思えません。
国内人口減少が、新戦略策定の動機となっているように思えますが、国内ビール事業は成長もしていますし、高い利益率も保っています。 - 2020年3月9日キリンが「資本市場とのコミュニケーションの進捗」と「長期的に持続可能な成長の促進」を開示キリン
2015年以降のTSR(トータルシェアホルダーズリターン)では国内、海外ビール大手、トピックス、日経平均を上回っています。
配当性向では国内ビール3社を上回り、フリーキャッシュフローに占める自己株式取得金額でも国内外のビール会社を上回る水準です。
ヘルスケア領域の5つのバリューチェーン(基礎研究、応用研究、商品開発、製造、販売)に分解して、キリン、ファンケル、協和発酵バイオ、協和キリンの役割を明示しました。
2016年の中計では、ROE、平準化EPS、連結事業利益ともに計画を上回った実績を残しています。
ファンケルに関しては、2024年に55~70億円の事業利益を見込みます。 - 2020年3月11日FPがウェブ説明会を実施
- 2020年3月16日議決権行使助言会社であるインスティテューショナル・シェアホールダー・サービシーズとグラス・ルイスがFPの株主提案を支持
- 2020年3月30日キリンが定時株主総会の議決権の結果を公表キリン
FPからの株主提案はいずれも否決されました。
- 2020年4月9日キリンによる自己株式取得状況のアップデートキリン
キリンの自己株式取得が設定枠の1000億円に到達しました。
- 2020年6月5日ミャンマー事業のアップデートキリン
キリンのミャンマー事業の合弁相手であるMyanma Economic Holdings Public Company Limited(以下 MEHL)における国連人権理事会からの指摘事項の調査についてアップデートしました。
- 2021年1月26日オーストラリアの乳飲料事業を豪乳業大手のベガ・チーズに5億6000万豪ドルで売却しました。キリン
蒙牛乳業へ売却する時よりも4000万豪ドル安くなりましたが、売却先を変えろとの、当局からの要請なので仕方がないです。