GEが航空機リース事業のGECASのAerCapへの売却を2021年3月に発表しました。売却価格の総額は、内訳が現金で240億ドル、AerCap株式の46%なので、発表日時点のAerCapの時価総額から、合計約312億ドルとなります。
GECASとAerCapのディール
同社によると、2020年のGECAS事業の譲渡対象資産は340億ドル、売上高(リース収入)は39.5億ドルなので、企業価値総資産倍率で約0.91倍、企業価値売上高倍率で7.9倍となります。2013年のAerCapによるIFLCの買収の企業価値売上高倍率が6.1倍と想定され、また直近の丸紅とみずほリース連合によるエアキャッスル買収や東京センチュリーによるアビエーションキャピタルグループ買収のマルチプルとほぼ同レベルの水準です。コロナ禍により、航空機需要が一時的に落ち込んでいるにもかかわらず、コロナ以前と同等のマルチプルがつくことは、今後の同業の成長を示唆するものでしょう。
発表日 | 買手 | 対象会社 | 売手 | 企業価値 | 通貨 | 売上高倍率 |
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2021 | カーライル | Fly Leasing | BBAM | 23.6 | 億ドル | 7.1 |
2021 | AerCap | GECAS | GE | 312 | 億ドル | 7.9 |
2019 | 丸紅、みずほリース | Aircastle | 73 | 億ドル | 8.3 | |
2019 | 東京センチュリー | Aviation Capital Group | 96 | 億ドル | 10.1 | |
2013 | AerCap | ILFC | AIG | 264 | 億ドル | 6.1 |
統合会社の航空機リース業界でのランキング
統合完了後のAerCapは、業界1位と2位の経営統合ということもあって、航空機リース業界で断トツの規模となります。3位のアボロンに売上高ベースの市場シェアで約4倍の差をつける計算となります。
航空機リースの市場シェア見込み(注)
1位 新生AerCap 3.4%
2位 アボロン 0.9%
航空機リース市場の成長は、2026年までに金額ベースで約6.8%での成長が見込まれています。
注)いずれも発表時点。最新の業界市場シェアは「航空機リース業界の世界市場シェアの分析」を参照
GEの航空機リース新会社持分への考え方
EBITDAに対する純有利子負債の倍率を2.5倍以内とするべく、GEは売却によって得られた資金を更なる負債の削減に当てる予定です。GEは2018年以降700億ドル以上の負債を削減しています。またGEの事業セグメントであるキャピタルは、もう一つの柱であった保険事業も非継続事業となっており、今後廃止される予定です。
また本件で得られるAerCap株式46%については、一部の売却が9ヶ月間、全部の株式の売却は15ヶ月間のロックアップ(売却禁止)期間がそれぞれあります。GEが更なる負債削減を検討していることから、当該46%は今後更なる業界再編の火種となる可能性があります。
参照したデータの詳細情報について
参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。
カーライル/Fly
AerCap/GECAS
丸紅、みずほリース/Aircastle
東京センチュリー/Aviation Capital Group
AerCap/ILFC