デジタル決済(デジタルウォレット、電子財布)スタートアップの業界カオスマップ、資金調達額ランキングや市場シェアについて分析をしています。ペイパル、アントフィナンシャル、テンペイ、ペイティーエム、モビクイック、フォンペ、グラブ、ゴジェック、PayPay、ストライプ、モリーといった有力決済スタートアップの概要や動向について分析を行なっています。
デジタル決済分野は、テックと金融が融合した新しい業態となりつつあります。クレジットカードや銀行口座と紐付き、QRコード決済などのスマホ向けアプリを提供する○○ペイは、まさに日進月歩の進化を遂げているデジタル決済分野とも言えます。決済だけにとどまらず、個人間の送金もアプリ内&手数料無料で行えるサービスを提供する場合もあり、デジタル決済用アプリを中核として様々なサービスが展開されています。
デジタル決済の定義
デジタル決済とは、銀行口座やクレジットカードと紐付き、自らは信用リスクを取らない一方で、QRコード決済、非接触型のIC決済、オンラインでの決済、といった新しい決済手段です。通常は、スマホに決済手段用アプリ(デジタルワレット、電子財布)をインストールし、アプリを通じて、入金や決済が行われます。販売店側でソリューションを提供するプレーヤーと消費者側でソリューションを提供するプレーヤーに二分されます。
日本では決済や送金サービスを手がける会社は、資金移動業者とも称されています。
デジタル決済プレーヤーの類型
テックと金融が融合されたサービスの提供がなされる分野であるため、様々な出自の会社が参入しています。日本の場合ですと、出身母体別で分類すると以下のようになります。
- SNS系:LinePay
- 交通機関:スイカ
- 通信系:PayPay、D払い、au Pay
- EC系:楽天ペイ、メルペイ
- ITジャイアント:アップルペイ、グーグルペイ
- 金融系:クイックペイ、ビザタッチ
- 販売店側の(オンライン)決済代行:ストライプ、モリー、ペイパル
これらに加え、クレジットカード、デビットカード、プリペイド(QUOカード)、銀行引落などの決済手法もあり、まさに百花繚乱という感じとなってきました。
ただし、デジタル決済プレーヤーと言っても、加盟店向けのソリューションと消費者向けのソリューションではプレイヤーも提供するサービスも異なります。例えば、ペイペイは、店舗での決済ボリュームを増やすために、加盟店に対してペイペイだけの決済を求めるインセンティブがあります。一方で、加盟店向けの決済ソリューションを提供するストライプにとってみれば、できるだけ多くの決済手段があった方が、店舗がストライプと契約するインセンティブが高まると考えます。
決済手段を減らしたい消費者向けの決済ソリューション提供会社と決済手段を増やしたい加盟店向け決済ソリューション会社は、潜在的に利益が相反するのです。
消費者向けの決済ソリューション
ペイペイ、アップルペイ、スイカなど
加盟店向けの決済ソリューション
ストライプ、ペイパル、モリーなど
デジタル決済スタートアップの業界カオスマップ
デジタル決済のスタートアップを直近の投資ラウンドでの資金調達額(縦軸)とシリーズラウンド(横軸)でマッピングした業界マップ(カオスマップ)を作成すると以下の通りとなります。円の大きさは資金調達累計額となります。またIPOをした会社の場合は、直近1年間の資本金及び資本準備金の増減と合計を直近の資金調達額と資金調達累計額とみなしております。
投資ステージはレイトステージのスタートアップが多く、資金調達額も1億ドルを超える大型の調達が目立ちます。デジタル決済の先輩格であるペイパルは既に上場をしており、同社のバリュエーションが投資にあたり一つの目線感ともいえます。なお、中国ではアリペイ(アントフィナンシャル)の市場を二分するデジタル決済会社であるテンセント系TenPayは資金調達を外部から行なっていないため本マップには掲載されていません。上記スタートアップの資金調達累計額は、本ページの更新時点で約752億ドルとなっております。
デジタル決済業界の資金調達累積額ランキング(市場シェア)
デジタル決済会社の資金調達累計額を分子に、上述した業界全体の資金調達額を分母にして、資金調達額シェアを計算し、ランキング化すると、2021年8月時点では、1位はペイパル、2位はアントフィナンシャル、3位はペイティーエムとなります。
デジタル決済業界の資金調達累計額シェアとランキング(2021年)
- 1位 アントフィナンシャル 40.5%
- 2位 ペイパル 22.1%
- 3位 Grab 13.3%
- 4位 ゴジェック 6.5%
- 5位 ペイティーエム 4.7%
- 6位 スクエア 3.9%
- 7位 ストライプ 3.1%
- 8位 PayPay 2.2%
- 9位 PhonePe 2.1%
- 10位 モリー 1.2%
- 11位 モビクイック 0.3%
市場規模
調査会社のベリファイドマーケットリサーチによると、2019年のデジタルウォレット業界の市場規模は10.1億ドルです。2020年〜2027年に年平均27.38%成長をして、2027年には70.1億ドルとなることが見込まれます。⇒参照したデータの詳細情報
ゼロからはじめる LINE Pay, PayPay, 楽天ペイ, d払い, au PAY, メルペイ&モバイルSuica キャッシュレス導入ガイド
主要なデジタル決済スタートアップの概要
PayPay
本社所在地:日本
設立年:2018年
ソフトバンクグループ傘下の決済アプリ提供会社です。
Gojek(ゴジェック)
本社所在地:インドネシア
設立年:2010年
創業者:Kevin Aluwi、Nadiem Makarim、Michaelangelo Moran
ライドヘイリング、デリバリーサービスやデジタル決済など含むスーパーアプリを展開しています。決済はGo Payで展開しています。
Grab(グラブ)
本社所在地:シンガポール
設立年:2012年
創業者:Anthony Tan、Hooi Tan
Grabはライドヘイリング、デリバリーサービスや決済を含むスーパーアプリを展開しています。タクシーやレストラン予約といったサービスも提供しています。決済はGrab Payで展開しています。
PhonePe(フォンペ)
本社所在地:インド
設立年:2012年
創業者:Sameer Nigam、Rahul Chari、Burzin Engineer
PhonePeはウォルマートが買収したインドのECコマースFlipkart傘下のデジタル決済会社です。送金や小売店での決済、各種公共料金の支払いが可能です。2021年に、中印の関係をよそに騰訊控股(テンセント)からの出資を受け入れました。
MobiKwik(モビクイック)
本社所在地:インド
設立年:2009年
創業者:Bipin Singh、Upasana Taku
インドの電子財布会社です。アプリ上で公共料金の支払い、交通機関の料金支払いなどの各種決済を行うことができます。
Ant FInancial(アントフィナンシャル)
本社所在地:中国
設立年:2014年
創業者:Jack Ma
Ant FInancial(アントフィナンシャル) はアリババ創業者のジャックマー氏によって設立されたデジタル金融サービス会社です。デジタル決済はAlipay(アリペイ)で展開しています。
PayPal(ペイパル)
本社所在地:米国
設立年:1998年
創業者:ピーター・ティール、イーロン・マスク
ペイパルは米国に本拠を置くデジタル決済提供会社です。クレジットカード各社と連動した決済、事前入金型の決済、個人間送金など多彩な決済手段を提供しています。
Paytm(ペイティーエム)
本社所在地:インド
設立年:2010年
創業者:Vijay Sharma
Paytm(ペイティーエム)はインドに本拠を置くデジタル決済提供会社です。アプリで決済や各種予約などができます。
TenPay(テンペイ)
本社所在地:中国
設立年:2005年
創業者:テンセント
TenPay(テンペイ)は中国のオンラインゲーム大手であるテンセント傘下のデジタル決済会社です。WeChat Payといった決済名で展開しており、中国のデジタル決済ではアリペイと並ぶ大手です。
Stripe(ストライプ)
本社所在地:米国
設立年:2010年
創業者:Patrick Collison、John Collison
ストライプは、企業向けに決済処理とカード発行のソリューションを提供しています。決済ゲートウェイや課金・購読料の支払いなどのソリューションをShopify、Woocommerce、Magentoなどのプラグイン・エクステンションとして提供しています。
Mollie(モリー)
本社所在地:オランダ
設立年:2004年
創業者:Adriaan Mol
Mollie(モリー)は企業向けにペイメントソリューションを提供しています。決済APIを提供することで、加盟店のオンラインやアプリベースのプラットフォーム上でMastercard、Visa、PayPal、SEPAなどの支払いが可能となります。
Square(スクエア)
スクエアは米国に本拠を置く決済ソリューションの提供会社です。スマホやタブレットをPOSや決済端末にするサービスを展開しています。
参照したデータの詳細情報について
参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。
参照した市場規模の情報