東洋製罐へのオアシスからの公開提案の分析

2021年5月25日にヘッジファンドで物言う株主であるオアシスが日本を代表する金属缶や飲料食品容器メーカーである東洋製罐に対して公開提案を行いました。東洋製罐の業績推移やオアシスの提案内容の分析を行なっています。

東洋製罐について

高碕達之助氏(のちに満洲重工業開発総裁、電源開発総裁、通商産業大臣を歴任)によって1917年に設立された日本を代表する金属缶・容器メーカーです。元々はシャケなどの水産食品向けの缶を製造していました。2011年に米大手製缶機械装置メーカーのストーレ・マシナリーを買収して、缶製造用の機械分野への事業展開も図っています。CVC投資では、クリーンミートの代表格であるエビ培養肉のスタートアップ「シオック・ミーツ(Shiok Meat)」に出資を行っています。2021年に物言う株主であるオアシスから公開書簡の送付がありました。

飲料や食品向けの金属缶などの容器分野においては世界大手となっています。

オアシスについて

セス・フィッシャー(Seth Fischer)氏によって2002年に設立された香港に本拠を置くヘッジファンドです。日本の上場会社に対して幅広く投資を行い、物言う株主として積極的なエンゲージメントを行なっています。過去にアルパイン、東京ドーム、三菱倉庫、安藤ハザマ、サンケン、東洋製罐といった会社に対して公開提案を行っています。

業績の推移と売上構成

売上高は7000億円半ばから後半で安定しています。人口減少が続く日本国内における飲料や食品容器の大きな成長は難しく、いかに成長分野で事業を展開するかが経営課題として考えられます。営業利益の水準は3%未満が続いており、利益率の改善も成長戦略とともに解を求められる課題の一つと思われます。

東洋製罐の業績推移
東洋製罐の業績推移

売上構成は包装容器の割合が大きくなっています。包装容器には金属缶、アルミ缶、プラスチック容器などのサブセグメントに分かれますが、サブセグメント毎の売上及び利益の開示はされておらず、競合他社が開示をしていることを勘案すると、もう一段の開示も検討余地がありそうです。

東洋製罐の売上構成(2020年度)
東洋製罐の売上構成(2020年度)

企業価値と主要マルチプルの推移

企業価値は新型コロナの影響もあり2020年に減少しました。PBRは2015年以降解散価値の目安となる1倍を下回っており、株主の1社であるオアシスが企業価値向上に向けた提案を行うことも一定程度合理性がありそうです。

東洋製罐の企業価値(EV)とマルチプルの推移(2015~2020年)
東洋製罐の企業価値(EV)とマルチプルの推移(2015~2020年)

株主構成

東洋製罐を創業した高碕達之助氏は、満州重工業開発の第二代総裁(第一代総裁は日産コンツェルン創業者の鮎川義助氏)、電源開発総裁、そして通商産業大臣を歴任した財界・政界に通じた著名経営者・政治家でした。主要株主には高碕氏が設立した東洋食品工業短期大学などが入り、また同大学の卒業生が東洋製罐に入社していることも考えると、コーポレートガバナンス・コードにおける持ち合い解消といった視点で株式の売却を求めることを難しいでしょう。

東洋製罐の株主構成(2020年3月時点)
東洋製罐の株主構成(2020年3月時点)

オアシスからの提案骨子

オアシスからはコーポレート・ガバナンス改善に向けた5つの議題、

(1)取締役報酬における株式報酬の割合を高め、企業価値向上への強いインセンティブとする

(2)法令違反などへの監督機能を強化するために監査役等委員会設置会社制度へ移行をする

(3)意思決定機関を明確にするために相談役や顧問制度の廃止

(4)PBRやROEを高めるために、自己株式の取得を行う

(5)機構関連財務情報開示タスクフォースを踏まえた経営戦略の公表

が提出されました。報酬の増額につながる提案と同時に自己株式取得による最適な資本構成へのリバランスを提案していることが特徴です。

特に、株主提案18頁においては、時価総額の46%が政策保有株式(1100億円程度、税引後)であるとの分析がなされており、一見すると確かに歪な資本構成であるとも考えられますので、こちらは同社経営陣としてもコーポレートガバナンス・コードの遵守という観点から検証が必要でしょう。⇒参照したデータの詳細情報

株価推移

オアシスからの提案を受け、株価を2021年5月25日〜6月11日で区切ってみると、同社の株価は上昇しています。取締役会での意見や株主総会でオアシスの提案への支持状況などが今後も株価に影響を与える可能性があります。

株主総会

オアシスの株主提案は2021年6月25日の株主総会で全て否決されました。新たな経営陣による企業価値向上の戦略に注目が集まります。