アクティビストファンドであるアセット・バリュー・インベスターズ(AVI)が2017年にTBSホールディングス(TBS)に投資を行いました。
AVIは、どうして民放の雄であるTBSホールディングスに出資をしたのでしょうか?どのようなやり取りがなされたかについて、AVIの公表資料に基づき、改めてまとめています。
時系列推移
- 2017年4月初めてのAVIからTBS経営陣へのアプローチAVI
御社の株主となったものです。TBSの企業価値は過小評価されているのではないでしょうか?
TBS・・・・・?
- 2017年9-10月AVIによる次のアプローチAVI
東京エレクトロン等の「政策保有株式」の合理性について説明を求めます。
TBS重要取引先との関係維持のため保有しています。放送局という性質上、数値目標のみに基づいた経営は行っておりません。
- 2017年11月AVIによる更なる対話AVI
コーポレートガバナンスコードに基づく義務として、「政策保有株式」の利益とリスクについての説明を求めます。
TBS東京エレクトロンの取得簿価は低く、株価が下落しても減損のリスクはないです。ROE向上のために自己資本を減少させるのは適切ではないし、取締役会は定期的にリスク管理をしています。
- 2017年12月東京エレクトロンの売却提案AVI
今までの株主対話を踏まえて、東京エレクトロン株式の売却を提案させて頂きます。
TBS必要に応じて売却する可能性はありますが、そもそも取得簿価は十分に低いので、株価下落による減損リスクはないのですが。。。
- 2018年5月株主提案AVI
剰余金の配当と東京エレクトロンの現物配当という株主提案を提出させて頂きます。
TBS東京エレクトロンの取得簿価は極めて低いので減損リスクはありません。東京エレクトロン株はTBSの必要に応じて換金します。
また同社株式の現物配当にはキャピタルゲイン課税の発生や配当所得の源泉徴収等の実務的な困難さがあります。
- 2018年5月TBSの反論に対する反論AVI
取得簿価は低くとも、昨日TBSの株式を購入した投資家は、昨日の東京エレクトロンの株価をベースとした持ち分時価でTBSの企業価値を判断しています。投資家にとってはTBSが保有する事業とは無関係の東京エレクトロンの株価下落のリスクは看過できないのです。
下記のチャート図の通り、TBSの全資産の66%が放送事業とは無関係の投資資産となっており、資産マネジメントを適切に行う必要がありますよね?
出典:AVI資料
キャピタルゲイン課税は、現物配当でなくとも発生するので、既に株価に折り込まれているのではないでしょうか?
配当所得は実務的に煩雑だが、やらない理由にならないですよね。
TBS議論は尽くしましたが、やはり平行線ですね。提案有難うございます。株主総会にはかりましょう。
- 2018年6月AVIによる株主提案の公開AVI
TBSの純資産が6120億円に対して、株式価値は4090億円です。
コーポレートガバナンスコードによれば、「上場企業が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。」とあるが、明確な指針がありません。
政策保有株式の時価はTBSの時価総額の46%を占めています。さらに、東京エレクトロンとリクルート等の銘柄に政策保有株式が集中しています。 - 2018年6月ISS
議決権助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)がAVI案を支持します。
- 2018年6月TBS株主総会。AVI案は否決。
- 株主総会後敗者の弁AVI
ISSや機関投資家は賛成してくれました。しかし、三井住友銀行や三井物産など、相互に長年の取引関係を持つ持ち合い株主の壁は壊すことができなかったのです。。。
AVIによるTBS株式取得後の株価の推移
2017年1月に取得以降、TBSの株価はトピックスを上回るリターンを上げていたが、2018年6月の株主総会によるAVI案否決後は、日経平均を下回る傾向が強くなっています。今後のTBSによる企業価値向上策の更なる実践が求められるでしょう。
2020年4月末のAVI出資先
TBSの名前が消えています。2月から4月末のいつかの時点で売却をしたのでしょうか?正確な取得価格はわかりませんが、株価の推移を見る限りでは、アクティビストによるアクティブエンゲージメント(積極的な経営陣との対話)は今回は上手くいかなかったのかもしれませんね。
出所:AVI公表資料