フィリップス対サードポイント
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フィリップス対サードポイント

1891年に創業された名門企業であるフィリップスに対して、米国のアクティビストファンドであるサードポイントが投資を行い、更なる企業価値の向上を求めているとの報道が英新聞のタイムズ(2017年6月18日付)で報道されました。

フィリップス自体は、フィラメント電球事業から成長し、1996年には10以上あった事業(音響機器、車載機器、産業機器、半導体、照明、家電、ヘルスケア機器、音楽レーベル、メディアなど)を売却・統合していき、現在はヘルスケア機器に特化した事業体へと自己変革していきました。 医療機器についてはフィリップスは歴史的に強く、たとえば1918年には医療向けX線を発明しています。その結果、90年台は100億ユーロ程度で推移していた時価総額も、2016年末には223億ユーロへと成長しています。その後も分社化したシグニファイへの出資持分の売却、自動車ライトやLEDコンポーネント事業の売却、さらには小型家電や調理家電の売却、ヘルスケア関連事業の買収を加速させることで、2019年末の時価総額は338億ユーロと時価総額ベースのCAGRで約14.9%の成長を遂げています。仮に、2016年もしくは2017年ごろにサードポイントが投資を行なったとしたら、過去の同ファンドのリターンに見劣りしない相応のリターンを得られているものと推察できます。
ただし、こうした成長の裏には、成長戦略の揺らぎも見え隠れします。たとえば、2008年に買収したアウトドア照明会社は、2016年にシグニファイとともに分社化されていますし、2009年に買収したコーヒーメーカーのSaecoは2015年に売却されています。将来の動向を予測することの難しさとともに、ポートフォリオ入れ替えの早さが同社の真の競争力と言えるのかもしれません。

フィリップスの売上高と戦略的アクションについて
  • 2001年
    売上高323億ユーロ
  • 2002年
    売上高318億ユーロ

    9工場を北米Jabilへ売却

  • 2003年
    売上高290億ユーロ
  • 2004年
    売上高303億ユーロ
  • 2005年
    売上高304億ユーロ

    モニター・テレビ事業の一部を台湾TPVへ売却
    欧州ブラウン管工場をJabilへ売却

  • 2006年
    売上高270億ユーロ

    半導体事業をNXPセミコンダクターとして分社化し、投資ファンドへの売却

  • 2007年
    売上高268億ユーロ
  • 2008年
    売上高264億ユーロ
    • 呼吸器・睡眠治療機器大手の北米Respironics(レスピロニクス)の買収
      米国のアウトドア照明大手であるGenlyte Groupの買収。買収総額(企業価値)は27億ドル。EBITDAマルチプルは11.4倍
    • テレビ事業の北米撤退
  • 2009年
    売上高232億ユーロ

    コーヒーマシンメーカーであるSaeco Internationalの買収

  • 2010年
    売上高254億ユーロ

    テレビ事業のインド撤退

  • 2011年
    売上高225億ユーロ

    売上高構成:医療用診断・治療機器(21%)、コネクテッドケア(10%)、パーソナルヘルス(19%)、照明(30%)、TV家電(17%)

  • 2012年
    売上高248億ユーロ

    テレビ事業のJVをTPVと設立

  • 2013年
    売上高233億ユーロ
  • 2014年
    売上高214億ユーロ

    LEDコンポーネントのLumiledsと自動車ライトと照明事業を分社化
    テレビ事業のJV持分をTPVへ売却
    ギター大手のギブソンブランズへオーディオ機器メーカーのWOOX Innovationsを売却

    売上高構成:医療用診断・治療機器(43%)、家電・パーソナルヘルス(23%)、ライティング(33%)

  • 2015年
    売上高168億ユーロ

    コーヒーマシンメーカーであるSaeco InternationalのN&W Global Vendingへの売却
    血管内超音波診断装置大手ボルケーノ(Volcano)を買収

  • 2016年
    売上高174億ユーロ

    照明事業会社シグニファイ( Signify)のIPO
    アクティビストのThird Pointがフィリップスの持分を取得

  • 2017年
    売上高178億ユーロ

    血管インターベンション及び心内リードマネジメント大手の北米Spectranetics(スペクトラネティクス)社を買収
    LEDコンポーネントのLumiledsと自動車ライトをアポロマネジメントへ売却

  • 2018年
    売上高181億ユーロ
  • 2019年
    売上高195億ユーロ

    小型家電や調理家電の戦略レビューを発表する一方で、消費者の健康的な生活→予防・未病→診断→治療→自宅療養というヘルスケアバリューチェーンへの特化戦略を打ち出しています。
    医療用診断・治療機器事業では、超音波検査(Ultrasound)、画像診断機器、血管撮影装置、MRI等に強みを持ちます。
    パーソナルヘルスケアでは、シェーバー、電動歯ブラシ、睡眠治療器などを展開しています。

    売上高構成:医療用診断・治療機器(43.6%)、パーソナルヘルスケア(30%)、コネクテッドケア(24%)

サードポイントとは?

サードポイント(Third Point)は1995年にダニエル・S・ローブ氏によって設立されたアクティビスト(株主対話型)ファンドです。経営陣との積極的な対話を重ねることで、設立以来14%のリターンをあげ、S&P500などの標準的なインデックスよりも高いリターンをあげています。2020年9月末時点での運用資金は137億ドルとなります。経営陣との対話(エンゲージメント)手法には、4つの段階があります。
1)初期的な対話:投資実行の公表前に通常の審査プロセスの一環で経営陣と対話を行います。
2)非公開の対話:サードポイント側より企業価値向上に向けた提案を非公開ベースで経営陣に対して行います。
3)公開対話:サードポイントの提案を公開し、他株主との協調しつつ、経営陣への企業価値向上に向けた対話を継続します。
4)プロキシーファイト:サードポイントの提案を実行するべく経営陣の刷新を株主総会で求めます。

投資先の実績としては、ヤフー、プルデンシャル、ダウ、サザビーズ、キャンベラズ、ハネウェル、ソニー、ネスレ、ファナック、ユナイテッドテクノロジーズ、アムジェン、バクスター、ディズニーが挙げられます。

過去のエンゲージメント

2013年

ソニーに対しエンターテインメント事業のスピンオフ(分離・独立)や不採算のパソコン事業の売却を提案

2017年

フィリップスへの投資を行ったとの報道

2019年

ソニーに対し半導体事業のスピンオフ、オリンパス、ネットフリックス、ソニーフィナンシャルホールディングスなどの持ち分売却を提案

2020年

ディズニーへ、配当よりも動画配信への投資を求める公開書簡を送付

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