デュークエナジーへのエリオットマネジメントからの公開提案の分析

物言う株主のエリオットマネジメントが米国の大手電力会社であるDuke Energy(デュークエナジー)に対して、2021年5月17日に公開書簡(⇒参照したデータの詳細情報)を送付しました。デュークエナジーの概要、業績推移、公開書簡の内容、公開提案後の株価の推移について分析しています。

エリオットマネジメントについて

Elliott Management(エリオットマネジメント)は、ポール・シンガー(Paul Singer)氏率いるヘッジファンドです。ディストレス戦略を得意とし、アクティビストとしても有名です。過去豪英資源大手のBHPグループに対する米石油事業の分離、米国の通信タワー大手であるクラウンキャッスルや韓国のサムスン電子への特別配当の支払い、塗料大手アクゾ・ノーベルの会長解任等を要求しています。

デュークエナジーについて

2005年に設立された米国を代表する電力・ガス会社です。源流は1905年に設立されたSouthern Power Companyに遡ることができます。電気、ガス、商業用再生可能エネルギーが事業の柱となっています。2021年に物言う株主であるエリオットマネジメントが事業分割の公開提案によるキャンペーンを実施しています。

なお、デュークエナジーは電力とガス業界の世界市場シェアランキングでは、上位に位置する大手電力会社です。

デュークエナジーの直近の業績

過去5年間でトップラインの大きな伸びはないものの、営業利益率は20%前後を保ち、業績は堅調に推移しています。

デュークエナジーの業績推移
デュークエナジーの業績推移

企業価値と売上高倍率の推移

企業価値と企業価値に対する売上高倍率も2020年にかけて上昇しています。

デュークエナジーの企業価値と売上高倍率の推移

公開提案の骨子

デュークエナジーは電力会社としてコングロマリットディスカウントの状態にあります。背景には異なる3つのエリア(中西部、フロリダ、キャロライナ)での電力事業を展開していることにあります。3つのエリアの事業をそれぞれ分社化することで、コングロマリットディスカウントは解消されるものと思われます。

中西部(インディアナ、オハイオ、ケンタッキー)の事業は約140〜150億ドルの価値があると算定しています。キャロライナの電力事業は540〜550億ドルの価値があると算定しております。フロリダの電力事業は220〜230億ドルの価値があると算定しております。合計するとデュークエナジーの価値は900〜930億ドルの価値となり、現在の同社の時価総額上回ります。特に、中部とフロリダは人口も増加していて魅力的な地域といえ、分社化することで、より高い成長を享受することができ、隠れていた価値を顕在化することができると思われます。

一方で、こうした潜在的な価値が顕在化しない理由として、いくつかの経営戦略上の間違い、たとえば、Atlantic Coast Pipelineのキャンセルによる減損、石炭灰による環境汚染の回復費用、高い価格での買収実施、格付け機関によるダウングレードといった点があります。この結果、現在の経営陣が株主から信頼を失ってしまっていることも課題です。

上記点を踏まえ、エリオットマネジメントは以下の点を提案しています。

1)優秀な独立取締役の任命
特にフロリダ州およびインディアナ州それぞれの政治的、立法的、規制的なサポートができる取締役が求められます。

2)独立した外部アドバイザーを起用
デューク社をキャロライナ州、フロリダ州、中西部に焦点を当てた3つの地域公益事業持株会社に非課税で分割することの分析評価を行う。

まとめると、離れた地域での発電事業は非効率なので、各地域で独立した電力会社を作り、もっと地域に根ざした運営をした方が良いとのこと。日本は歴史的に電力会社が地域的に10社に分割されていますが、全社を経営統合して一つの電力会社にすれば、経営効率がよくなるわけでもないかもしれな、とのことがエリオットの指摘から示唆されます。但し、業績や企業価値は堅調に推移しており、業績が悪化しているとは言えません。こうした状況の中、デューク経営陣の対応には注目が集まります。

提案後の主要なやりとり
  • 2021年5月
    エリオットからのデュークエナジー経営陣への公開提案

    エリオットによる公開サイトDuke Refocusedも同時開設

デュークエナジーの株価推移

2021年5月17日に発表された公開キャンペーン後の1ヶ月間の株価は堅調から横ばいに推移しています。エリオットの提案を契機としたさらなる経営改善を株主が期待しつつ、経営陣側の反応を待っているとも推察できます。