日本酸素の市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

1918年に設立された国内産業ガス最大手です。三菱ケミカルホールディングスが筆頭株主です。2018年にリンデと経営統合を発表したプラクスエアの欧州事業を買収しています。産業ガスの市場はほぼ再編が終わりました。今後は、ガス分離・合成技術やガスアプリケーション等の新技術の獲得、医療ガスを含むメディカル事業(医療機器、在宅医療、病院設備等)といった新市場の拡充を目指しています。2020年に日本酸素ホールディングスが設立され持株会社体制へと移行しました。

業績推移(年次)

2018年度
売上高は740,341百万円で、前年度比15%増となりました。営業利益は66,863百万円になりました。営業利益率は9%になりました。国内、海外 での製造業の生産活動は堅調であり、セパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷は順調でした。エレクト ロニクス関連では、国内の一部製品分野向け電子材料ガスの出荷が減少いたしました。

2019年度
売上高は850,239百万円で、前年度比15%増となりました。営業利益は93,921百万円になりました。営業利益率は11%になりました。事業環境は、米中貿易摩擦 などの影響を受け、国内では、主要関連業界を中心に生産活動が弱まりました。エレクトロニクス関連において は、電子材料ガスの出荷は、国内では前期並みでしたが海外では減少しました。一方、米国では製造業の生産活動 は底堅く、セパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷は前期並みに推移しました。 しかし、当第4四半期連結会計期間後半から、新型コロナウイルス感染症が世界規模で拡大し、当社グループに おいても欧州ガス事業とサーモス事業の業績に影響が出ました。

2020年度
売上高は818,238百万円で、前年度比4%減となりました。営業利益は88,846百万円になりました。営業利益率は11%になりました。新型コロナウイルス感染症の世界的拡大の影響により、第1四半期連結会計期間では進出国及び地域において大幅な景気低迷と 需要減退の局面を迎え、製造業の生産活動も急速に減速・停滞しておりました。しかし第2四半期連結会計期間に 入り全般的に回復の兆しが現れはじめ、第3四半期連結会計期間からセパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の 出荷は緩やかに復調してまいりましたが、前期に比べて大きく減少しました。

2021年度
売上高は957,169百万円で、前年度比17%増となりました。営業利益は101,183百万円になりました。営業利益率は11%になりました。事業環境は堅調な経済回復に支えられ、すべての事業セグメントで改善しました。その結果、セパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷数量は前年度に比べて大きく増加しました。一方、電力、原油、液化天然ガスの価格上昇、サプライチェーンの混乱、及び全世界レベルでの諸物価の上昇が継続しコストが上昇しましたが、各セグメントでの販売価格の見直しや原価・諸経費の削減努力により対応しました。

2022年度
売上高は1,186,683百万円で、前年度比24%増となりました。営業利益は119,524百万円になりました。営業利益率は10%になりました。ウクライナの 地政学的問題、米中貿易摩擦、世界的なエネルギーコストの高騰や物価上昇、円安の進行など、先行きを見通すことが困難な状況でした。この結果、主力製品であるセパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷数量は、前期 比で減少しました。一方で、コスト増加分の販売価格への転嫁等の価格マネジメント、さまざまな生産性向上への取組みに、グループ全体で注力しました。

日本酸素HDの業績推移(FY2016~FY2020)
日本酸素HDの業績推移(FY2016~FY2020)

業績推移(四半期)


2022年度第2四半期(07ー09月)
売上高は297,693百万円になりました。営業利益は26,400百万円、営業利益率は9%になりました。

2022年度第3四半期(10ー12月)
売上高は299,343百万円になりました。営業利益は30,526百万円、営業利益率は10%になりました。

2022年度第4四半期(01ー03月)
売上高は313,641百万円になりました。営業利益は35,126百万円、営業利益率は20%になりました。

2023年度第1四半期(04ー06月)
売上高は308,903百万円になりました。営業利益は40,715百万円、営業利益率は13%になりました。

2023年度第2四半期(07ー09月)
売上高は303,668百万円になりました。営業利益は40,861百万円、営業利益率は13%になりました。

日本酸素HDの四半期業績推移

日本酸素HDの四半期業績推移

EPS・配当額・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比14%増の168.85円になりました。1株当たりの配当は前年度比12%増の38円になりました。配当性向は23%になりました。

日本酸素HDの四半期業績推移

日本酸素HDの四半期業績推移

業績予想

2023年10月
2023年度第二四半期の決算短信において、2023年度通期の売上収益は1,230,000百万円、営業利益は163,000百万円を予定していると掲載されています。

事業構成


セグメントは、日本、米国、欧州、アジア・オセアニア、サーモスに分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

日本酸素HDの売上構成(2022年度)
日本酸素HDの売上構成(2022年度)

以下の製品やサービスを以下の各セグメント領域で提供しています。また、サーモスセグメントでは家庭用品を製造しています。
酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス、ヘリウム、水素、アセチレン、ガス関連機器、特殊ガス(電子材料ガス、純ガス等)、電子関連機器・工事、半導体製造装置、溶断機器、溶接材料、機械装置、LPガス・関連機器、医療用ガス(酸素、亜酸化窒素等)、医療機器、安定同位体。

日本
収益力の強化に向けた事業ポートフォリオの見直しとともに、エレクトロニクス向けを中心とした新規商品・サービスを強化しています。また、ガス利用を基点としたイノベーションを実現し、新たな事業領域の探索・拡大を目指しています。

米国
生産拠点の整備やオンサイト事業拡大、ディストリビューターのM&Aによる事業密度向上を目指しています。また、再生可能燃料を原料とする大規模水素製造プラントの建設等、環境関連に対する取組みも推進しています。

欧州
食品、医療などのレジリエンス市場に注力するとともに、域内における環境関連でのビジネス機会獲得を目指しています。その一環として、2023年度期は、欧州でのバイオメタン市場の拡大における戦略的パートナーへの出資を行いました。

アジア・オセアニア
大型オンサイト案件の獲得や空気分離装置の能力増強、HyCO(※)案件の獲得、新商材や事業エリアの拡大に注力するとともに、各事業会社の収益力強化に向けて、生産性向上活動の浸透を図っています。また、2023年4月から、市場に一層密着した事業運営を目指し、東南アジア+インド事業、東アジアエレクトロニクス事業、東アジア産業ガス事業、オセアニア事業の4サブセグメント体制をスタートしました。
(※)天然ガス等から水蒸気改質装置(SMR)で分離される水素(H2)と一酸化炭素(CO)を石油精製・石油化

サーモス
サーモスセグメントにおいては「人と社会に快適で環境にもやさしいライフスタイルを提案します」という理念に従い、断熱技術を利用することで省エネルギーに貢献するとともに、快適なライフスタイルを実現すべく、積極的な商品開発を推進しております。

M&A情報

産業ガスは地産地消する形がコスト競争力を持つため、地域補完を目指した買収を行っています。

2012年 シンガポールの産業ガス・溶接機器メーカーであるLeeden Limitedを買収
2014年 米国有数の炭酸ガスサプライヤー Continental Carbonic Products, Inc.を買収
2015年 豪州・オセアニアの産業ガスディストリビューターRenegade Gas Pty Ltdを買収
2016年 Air Liquideが競合サプライヤーである米Airgasを買収することに伴い、米国当局の指示に基づいて売却対象とした米国での産業ガス事業の一部、並びに関連事業資産を買収
2016年 オーストラリアの産業ガスメーカーのSupagasを買収
2018年 独の産業ガスサプライヤーLindeがPraxair,Inc.を買収することに伴い、欧州当局の指示に基づいて売却対象とした欧州(12カ国)での産業ガス事業の一部を買収
2018年 ディストリビューターの米Weld Specialtyを買収
2018年 Praxairの欧州事業を買収
2019年 Lindeから米国HyCO事業を買収

株主構成

三菱ケミカルの上場子会社にあたります。

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