レンタカー業界の世界2位のハーツグローバルホールディングス(Hertz Global Holdings)が2020年5月22日に法的整理を申請しました。
最近の同社の法的整理に関するニュース
- 2020年5月5日バロンズ
ハーツが法的整理申請の可能性。
Hertz Could File for Bankruptcy. - 5月20日ウォールストリートジャーナル
ハーツがコロナウイルス禍からの生き残り戦略をかけてPaul Stone氏をCEOに指名か?Hertz Names Paul Stone as CEO as Firm Fights for Survival Amid Covid-19
- 5月21日ニューヨークポスト
ハーツが清算プロセスの間際か?
Hertz may be on verge of liquidation - 5月22日ブルームバーグの推測記事
経営陣交代が相次ぐハーツが資金繰り悪化。
Hertz Runs Into Cash Crunch After Years of Management Tumult - 5月22日ハーツIR
ハーツが法的整理を申請
Hertz Global Holdings Takes Action To Strengthen Capital Structure Following Impact Of Global Coronavirus Crisis - 6月12日新株発行の推測記事
裁判所より最大10億ドルの新株発行の承認。株式の売買が行えなくなるチャプター11申請後に新株発行を行うのは異例の手続き。
Hertz Global Holdings Inc said it won bankruptcy court approval on Friday to sell up to $1 billion in stock
ロイター - 6月18日新株発行の中止
SECとの協議の結果、新株発行は中止へ
Effective June 18, 2020, the Finance Committee of the Board of Directors determined that it was in the best interests of the Company to terminate the ATM
ハーツFORM 8-K
Program and directed that the ATM Program be terminated. - 2020年11月ハーツ子会社の自動車リースを行うDonlenの約9億ドルでの売却を発表しました。
再保険会社のAtheneが買収をしました。
会社概要
ハーツグローバルホールディングスは、レンタカー事業と自動車リース事業を行う国際的なレンタカー・フリートマネジメント会社です。1918年に創業されました。レンタカー事業は、世界中の約1万の店舗を通じて、Hertz」、「Dollar」および「Thrifty」ブランドを通じて行われています。
自動車リース事業は子会社のドンレン(Donlen)を通じてサービスを提供しています。
2019年の売上高は91億ドルで、保有車両台数は約77万台となっており、同じく米国の同業であるエンタープライズホールディングスに次いで世界2位の会社です。
1926年にGMの傘下に入ったのち、1954年に株式公開→1967年にRCA傘下→1985年にはAllegis Corporation傘下→1987年にフォード傘下→2005年に投資ファンド連合(Clayton, Dubilier & Rice,カーライル、メリルリンチグローバルプライベートエクイティ)傘下と複雑な変遷を経て、2006年に再度株式公開を公開して現在に至ります。
ハーツの業績推移
出所:注1
2015年以降の業績推移を見てみると、売上高は穏やかですが成長(90億ドル→98億ドル)しています。またEBITDAマージンは30%後半、EBITマージンも直近では7.8%と回復しています。しかし、当期利益を見ると、赤字が2016年12月期以降継続しています。同社の負債での資金調達のコストが非常に重いことがうかがえます。米国の同業であるエイビスバジェットグループと比較すると、営業利益率と当期利益で見劣りしています。
エイビスバジェットグループ
出所:注1
車両を保有する上でレバレッジを利かせるために負債が大きくなる傾向があり、両社ともにD/Eレシオが10倍を超えている点は共通しています。
売上構成
出所:注1
事業構成としては、レンタカー事業(米国と米国外)及び自動車リースの2本柱となります。レンタカー事業の比率が8割を超えており、地域的には米国の割合が約7割超となっています。
株価推移
出所:注1
株価は、上述した法的整理の可能性を反映して下落傾向にあり、本頁作成時点で直近高値より約7割下落しています。法的整理の可能性を市場は織り込みつつあると言えます。
負債
2019年12月末で、総額約171億ドルの有利子負債を有しています。銀行借入、証券化、シニアノート等有担保・無担保含めて多様な資金調達を行っています。
シニアノートの調達金利は5%後半~7%台前半とかなり高い印象です。
出所:同社アニュアルレポート
注1)スピーダ