三菱鉛筆株式会社は、1887年に眞崎仁六が東京で「眞崎鉛筆製造所」として創業しました。1903年には、逓信省(現在の総務省)への鉛筆納入を記念して「三菱」ブランドを登録しました。1925年、眞崎鉛筆と大和鉛筆が合併し「眞崎大和鉛筆株式会社」となり、1952年に「三菱鉛筆株式会社」へ社名を変更しました。1959年にはボールペンの製造を開始し、1979年には水性ボールペン「ユニボール」を発売しました。1986年の創業100周年を機に、水性顔料マーカー「プロッキー」を発売し、2006年には油性ボールペン「ジェットストリーム」を市場に投入しました。これらの製品開発とブランド強化が、同社の事業拡大の重要な分岐点となっています。
2020年度
売上高は前年度比11%減の55,180百万円になりました。営業利益は前年度比24%減の5,493百万円になりました。営業利益率は10%となりました。売上高の減少は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うイベント開催への制限やテレワークの普及により、ノベルティ需要が縮小したことに加え、世界各国の海外渡航制限によるインバウンド需要の減少などが影響したことが要因です。
2021年度
売上高は前年度比12%増の61,894百万円になりました。営業利益は前年度比37%増の7,520百万円になりました。営業利益率は12%となりました。国内市場では、新型コロナウイルスの感染拡大による 外出自粛の長期化によって、イベント向けのノベルティとしての利用の減少や、インバウンド需要の低迷が続いております。一方、世界的にワクチン接種が進展したことに伴い、海外市場を中心に需要回復の基調が見られました。また、自宅での時間が増えたことで、生活をより充実させるためのアート&クラフトといった需要も定着しつつあります。さらに、インターネットの普及は流通に変化をもたらし、お客様の消費行動を変容させました。このような事業環境の中、具体的な活動としては、従業員及び取引先の安全確保と事業継続の両立を念頭におきな がら、年間を通して新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて勤務体制や行動様式を工夫しつつ、「最高の品質 こそ 最大のサービス」という社是のもと、お客様が潜在的に抱えるニーズの具現化や社会環境に適応した商品を提 供し、「書く、描く」行為に喜びや驚きといった彩りを添えることができる商品開発に継続して取り組みました。
2022年度
売上高は前年度比11%増の68,997百万円になりました。営業利益は前年度比23%増の9,243百万円になりました。営業利益率は13%となりました。具体的な活動として、障がい者が才能を発揮し、挑戦する機会を生み出すとともに、自立支援を推進することを目的として、一般社団法人障がい者自立推進機構とオフィシャルパートナー契約を締結し、“自分らし さ”をテーマに表現するパラリンアートコンテストを開催いたしました。また、サステナブルな事業体制構築に向け た取り組みとして、「ジェットストリーム」シリーズから、日本国内で回収された海洋プラスチックごみと使い捨て コンタクトレンズの空ケースからリサイクルした“ポストコンシューマープラスチック”をボールペン軸に採用した 「ジェットストリーム海洋プラスチック」を発売し、「エコマークアワード2022」の「ベストプロダクト」を受賞い たしました。また、資源循環システムの構築を目指し、子供が学ぶときに初めて手にする鉛筆を通じて資源の循環を 体験、実感していただけるように、鉛筆の資源循環システム「フォレストサポーター鉛筆」をテスト発売し、「2022 年度ウッドデザイン賞」において奨励賞を受賞いたしました。さらに「使用済み」のプラスチック製ペンの「水平リサイクル」実証プロジェクトを開始いたしました。
2023年度
売上高は前年度比8%増の74,801百万円になりました。営業利益は前年度比28%増の11,851百万円になりました。営業利益率は16%となりました。具体的な活動として、「uni MATERIAL JOURNEY 旅する素材。」というテーマで、役目を終えたあとに廃棄されるものや使用価値の高い循環可能な「素材」に着目し、筆記具として生まれ変わらせて価値をつなぐという試みとして、国内生産の木製家具メー カーのカリモク家具とコラボレーションし、木製家具を作るときに生まれる端材を使用した「JETSTREAM karimoku 4&1」を発売しました。また、子供たちの学習環境がタブレットの普及によって変化するなか、ノートに書いた文 字をタブレットで撮影して電子黒板などへ投影したりする“タブレット授業”において、濃くはっきりと書けて描 線の反射が少なく視認性の高い画像を撮影することができる鉛筆「uni タブレット授業えんぴつ」を発売し、子供たちの学習をサポートしております。加えて、“「書く」にのめり込む”をテーマに、書き始めから書き終わりまでノックすることなく書き続けられる世界初の機能が搭載されたキャップ式シャープペンシル「KURUTOGA DIVE」 の新色としてオーロラパープルを発売いたしました。
2024年度
売上高は前年度比19%増の88,820百万円になりました。営業利益は前年度比3%増の12,189百万円になりました。営業利益率は14%となりました。国内市場に限定されず多くの先進諸国で少子高齢化や人口減といった構造的な問題を抱えていることに加え、デジタル化の進展によって事務用品としての筆記具の需要は縮小傾向にあります。他方、ライフスタイルや価値観の多様化により、お客様が商品に求める役割や体験価値は変化しております。また、インターネットを介した流通の普及により一層ボーダーレス化が進んだことや新興企業の参入といった背景から、品質・コスト面を中心として業界全体の競争環境は激化しつつあります。さらに、環境問題をはじめ とするサステナビリティという共通課題は、今や企業活動の中心的な価値観となり、商品やサービスの提供において 不可欠なものとなりました。こうした市場環境の変化に迅速に対応し、市場の求める価値を具現化し続けていくこ とがより重要となっております。このような事業環境の中において具体的な活動としては、世界販売本数が年間1億本以上の「ジェットストリーム」シリーズから、従来の高級感を維 持しつつ、ビジネスシーンだけでなく日常のあらゆる場面に調和するデザインへとリニューアルした「JETSTREAM PRIME(ジェットストリーム プライム)」を発売しました。また、同シリーズの新たな選択肢として、よりかろやか な書き心地を特長とする「JETSTREAM Lite touch ink(ジェットストリーム ライトタッチインク)」を搭載した商品 の展開を拡充しました。さらに、十人十色、多様な表現に寄り添える存在になりたい、暮らしやコミュニケーション が豊かになる色の楽しさを伝えていきたいという想いから企画した色鉛筆「toirono(トイロノ)」を発売しました。 加えて、長期的な成長戦略の一環として、「書く、描く」という体験そのものの価値を広げ、誰もが自分らしく表現 できる場を創造するための取り組みとして、本格的に一般財団法人表現革新振興財団の活動を開始するとともに、グ ローバル市場での事業基盤強化に向け、2024年3月にグループに加わったC.Josef Lamy GmbH(Lamy社)との連携を強めることでシナジーを最大化するための体制構築を進め、またインド・東南アジア市場への展開を見据えたインドでの合弁会社設立に着手いたしました。
三菱鉛筆の業績推移
2023年第4四半期(10ー12月)
売上高は前年同期比15%増の21,672百万円になりました。営業利益は3,758百万円、営業利益率は17%となりました。
2024年第1四半期(1ー3月)
売上高は前年同期比6%増の20,073百万円になりました。営業利益は3,065百万円、営業利益率は15%となりました。具体的な活動として、時代や環境の変化にあわせて「書く、描く」シーンが多様化するなかで、あらゆる人にとっ ての「ちょうどいい」を目指した新たな選択肢として、ジェットストリームシリーズから、より“かろやか”な書き 心地を実現した新開発のインクを搭載した「JETSTREAM シングル(Lite touch ink 搭載)」に加えて、シャープと 多色を搭載した多機能ペンのモデル「JETSTREAM 多機能ペン 4&1(Lite touch ink 搭載)」を発売いたしました。 また、サステナブルな事業活動のひとつの在りかたとして、役目を終えたあとに廃棄されるものや使用価値の高い循 環可能な「素材」に着目し、筆記具として生まれ変わらせた商品を「uni MATERIAL JOURNEY 旅する素材。」という テーマで展開しており、「ジェットストリーム 4&1 BAMBOO」「ジェットストリーム 海洋プラスチック」をラインア ップに追加いたしました。さらに、欧米を中心にArt&Craftの分野における自己表現のツールとして水性サインペン 「POSCA」が幅広く受け入れられていることから、さらなる販売及び供給体制の強化に努めるとともに、各地域の市 場のニーズにあわせたマーケティング体制の整備に向けた活動を行いました。
2024年第2四半期(4ー6月)
売上高は前年同期比29%増の22,361百万円になりました。営業利益は2,186百万円、営業利益率は10%となりました。具体的な活動として、「書く(かく)・描く(えがく)」という表現体験をご提供する場として、東京・大井町に当社 初の体験型空間「o-i STUDIO(オーイスタジオ)」をオープンいたしました。o-i STUDIOでは、三菱鉛筆の筆記具を利用できるほか、ワークショップをはじめとする様々な表現体験が可能で、これらの体験を通 じて人と人がつながり、表現の和が広がる場として、地域社会の活性化に貢献することを目指しております。ま た、“芯が回ってトガりつづけるシャープ”「クルトガ」シリーズから、メタル製の軸による上質さと安定した筆記感を実現した「KURUTOGA Metal(クルトガメタル)」を発売いたしました。さらに、北米市場を主なターゲットとし、これまで水性ボールペンでは実現が困難だったリフィル交換可能なノック式タイプで、万年筆のような軽い書き心地を実現した水性ボールペン「uni-ball ZENTO」を発売いたしました。
2024年第3四半期(7ー9月)
売上高は前年同期比21%増の20,478百万円になりました。営業利益は2,631百万円、営業利益率は13%となりました。具体的な活動として、表現の場を提供する活動のひとつとして、「自分らしさを描く」をテーマに、オフィシャル パートナー契約を締結している一般社団法人障がい者自立推進機構と第3回アートコンテストを開催いたしました。 また、これまでの筆記時の集中力の「予測」と「維持」に関する研究をもとに、筆記具の動きを加速度と筆圧で測定 するセンサー機能を搭載したIoTペンの開発に着手するなど、筆記具の役割である「書く(かく)、描く(えが く)」ことに加えて、新たな提供価値を創出するための活動を継続してまいりました。加えて、商品戦略に基づく施策として、世界販売本数が年間1億本以上の「ジェットストリーム」シリーズを長期的な視点でさらに定着化させることを目的として、従来の「ジェットストリーム」より“かろやか”な書き心地を特長とした「JETSTREAM Lite touch ink」搭載モデルの新軸色として、前向きさや自分らしくある強さといったテーマを表現したはっきりした色 味ながらも日常になじむカラーを限定で発売するとともに、単色ボールペンにおいて定番の赤インクおよび青インク を継続品として展開しました。
2024年第4四半期(10ー12月)
売上高は前年同期比45%減の11,889百万円になりました。営業利益は4,307百万円、営業利益率は36%となりました。
三菱鉛筆の四半期業績推移
希薄化後EPSは前年度比10%増の204.8円になりました。1株当たりの配当は前年度比15%増の46円になりました。配当性向は22%になりました。
三菱鉛筆のEPS・1株配当・配当性向の推移
2025年02月
2024年度第四四半期の決算短信において、2025年度通期の売上高は93,000百万円、営業利益は13,100百万円を予定していると掲載されています。
セグメントは、筆記具、その他に分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。
三菱鉛筆の売上構成(2023年度)
筆記具
筆記具及び筆記具事業で培った技術を転用した化粧品等の筆記具周辺商品の製造及び販売を行っております。
その他
主にユニ工業㈱による粘着テープ事業及び㈱ホビーラホビーレによる手工芸品事業を行っております。
2024年 筆記具の製造および販売をするC. Josef Lamyを買収