素材研究開発型のスタートアップSpiber社の資金調達の推移と展望の考察
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素材研究開発型のスタートアップSpiber社の資金調達の推移と展望の考察

Spiber社は関山氏らによって2007年に設立された「植物由来の原料」をもとに「微生物発酵」プロセスによって新しいタンパク質素材を開発・製造する会社です。設立当初はくもの糸由来の繊維の開発を目指しましたが、2010年後半にピボットをし、より耐久性に優れた植物由来のタンパク質で、プラスチック繊維や動物毛皮に代替する戦略へと切り替えました。

市場規模

合成繊維に代替する素材という観点からは、合成繊維の市場規模がSpiber社の製品が属する市場規模の一つのベンチ―マークになると思われます。調査会社のグランドビューリサーチによると、2020年の石油由来の合成繊維の市場規模は約600億ドルで、2028年にかけて年平均6.6%での成長を見込みます。衣類、家具、ろ過、自動車といった分野で利用されています。リポートアンドデータによると同分野の2020年の市場規模は約615億ドルです。2027年まで6.5%の成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報
植物由来で発酵プロセスによって取り出すタンパク質を、合成繊維の代替としていくことはESG的な側面からの後押しもあり、量産化できれば上記の推定成長率を凌駕する市場の伸びとなることは間違いないでしょう。

競合環境

代替繊維という側面でのタンパク質の開発は、国内外ともに同社の独壇場と思われます。まさに日本独自の技術と言えそうです。よって、間接的な競合会社としては、合成繊維メーカーである石油化学会社が考えられます。Spiber社の製品が価格面で、合成繊維とどの程度差を詰められるかが普及にあたっての最大の関門でしょう。
一方、代替タンパク質は、現在代替肉といった食品分野に脚光があたっており、バイオ繊維、バイオ糸という分野の知名度を挙げることができれば、Beyond MeatならぬBeyond Plasticという次の領域での成長が大いに期待できそうです。

業績の推移

2020年中盤に向け量産体制に入るため売上はほぼ計上していません。素材開発型のスタートアップに共通する業績推移と言えます。

Spiberの業績の推移
Spiberの業績の推移©同社資料よりディールラボ作成

資金調圧の推移

2021年にカーライルと海外需要開拓支援機構などから計344億円を調達し、負債とエクイティ合計でシリーズKラウンドまでにエクイティで約605億円を調達しています。グローバルでの知名度をあげるためにも、上場プロセスを簡略化できるSPAC上場も選択肢として考えられます。

Spiberの資金調達推移
Spiberの資金調達推移

参照したデータの詳細情報について


参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。

参照した市場規模の情報

Grand View Research
Reports and Data

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